第十七話 実力
「っぶねぇだろが! 当たったらどうする!?」
「だいじょぶ、だいじょぶ。こう見えても、あたっしって結構上手いから!」
「上手だの下手だのの問題ではないわ!」
俺たちから怒号をとばされても、サキは「へへっ!」っと笑ったままだった。
張り倒してやろうか。
「まあまあ……」
そんな俺たちの様子を見て、レイジが制止に入る。
「ったく……」
「ごめんごめんって」
「というか、にしてもサキさんよぉ……」
「なんというか……ちょっと性格変わった?」
「えっ?」
俺は最近、彼女に対してある異変をおぼえていた。
「確かに……サキに最初出会った時は、丁寧な言葉遣いと物腰で、品があってまるで聖女みたいな……いや、ある意味聖女っちゃ聖女か」
「でも今はガサツでおてんばで、喋り方も……」
「おい二人とも、まるで私に品がないみたいな言い方をするじゃあないか? これでもアタシは年頃の乙女なんだから!」
サキは顔を赤らめながら言った。
やっぱりどう考えても色々と変わっている。
本人は気付いていないみたいだが、一人称も「わたし」から「アタシ」になっているし。
「それは恐らく刻印の影響でしょう」
ふと声のした方を振り返ると、いつのまにかそこにはロギアさんの姿が。
ちなみに、この前俺がサキのことでかっとなってしまい、思わず彼女に敬語を使うのを忘れてしまったせいで、委員長とガルムからかなり強めに責められたので、彼女への言葉遣いにはなるべく注意している。
「刻印......? それってあの目玉みたいなやつのことですか?」
「いいえ、少し違います。サキ、教会の刻印が刻まれた手とは逆の手の甲を見てみなさい」
「逆......ですか? ......って、なにこれ?」
目玉の描かれた左手とは逆の右手の甲。
そこにはゾッとするような紋様の右手に描かれた目玉とは対照的に、かわいらしい木の葉の紋様が現れる。
「それは私が刻んだものです。その刻印には、教会の呪縛を弱める効果があります。ですが、ここれはあなたを監視するためにつけたものでもあります。いざとなったら、その刻印の力であなたをどうとでもすることができますので......くれぐれも注意していて下さい」
そう言ってロギアは「ふふっ」と微笑んだ。
でもなんだろう......
笑っているはずなのにその顔がとてつもなく怖い。
この人は絶対に怒らせちゃいけない人だ、と確信した......
「それにしても、みなさんはこんなところで何をしておられたのですか?」
ロギアさんが俺たちに不思議そうに尋ねる。
「私はちょうど、此奴に稽古をつけていたところです。前回は此奴に負けてしまいましたから、今回はあまり舐められぬよう、魔法で身体強化を施してあります」
「やっぱりずるくない?」
「これも我の実力だ」
俺たちがまた口喧嘩を始めようとかというところで、ロギアさんが「ふふっ」っと微笑む。
「やはりあなたらしいですね。ガルム」
「……? どういうことです?」
俺が質問すると、彼女は昔を思い出しながら語ってくれた。
「ガルムに昔から、自身の力を極力相手に合わせながら闘う癖があるんです。できるだけ実力を拮抗させて、その闘いを楽しむ。互角の勝負の中で相手を知って、その状況から勝つ方法を見つけ出そうとしたり……」
「ガルム、お前って戦闘狂だったのか?」
「馬鹿なことをいうな。私はいつも『紳士的に』を心掛けているのだぞ」
よく言うよ、さっきの口喧嘩の最中も時折汚い言葉が口から漏れていたくせに。
「……せっかくですし。みなさんの実力を今見せてもらってもよろしいでしょうか?」
ロギアさんからの突然の申し出。
まあ別に断る理由もないし……
「良い考えですな。実は私はまだ、この小僧以外とはあまり闘ったことがないもので……」
「俺は別に構わないけれど……」
俺は後ろを振り返り、レイジとサキの方を見る。
「俺は別にいいよっ」
「アタシも別に反対する理由はないです!」
「オッケー。それじゃ……改めて手合わせ願おうか! いくぜガルム!」
「ああ、来い!」
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