第十二話 楽園
「ここがポラリス……なんというか……」
「とても神秘的……」
厚い霧に覆われた道を抜けてしばらくすると、そこにはまさに楽園と呼ぶにふさわしい光景が広がった。
学校の校舎程はありそうな巨大な苔岩を中心に緑の園が広がる。
苔岩には無数の洞穴が掘られ、その中から多くの種類の動物が顔を覗かせていた。
「まずは姫様に会う必要があるな……よし、お前たちついてこい」
ガルムの案内されて、俺たちはポラリスの中へと進んでゆく。
楽園とは言っても、森の中にできた体育館学校の校庭よりも少し広い広場に、動物の種族が暮らしている感じで、決して広い場所とは言い切れない。
ただなんだかこの場所にいると、まるで自分の家にいるような安心感があるのは確かだ。
「鳥、猫、狐、リス……本当にいろんな種が共存しているんだな」
「あっ、見てよユウジ! あそこのクマちゃん可愛い! おーい!」
サキがそう言って、遠くの陰からひょっこり顔を出した熊に向かって手を振る。
しかし警戒されているのか、動物たちは洞穴からは出てこようとはしなかった、しかし。
「ニンゲンだ! ニンゲン、ニンゲン!」
「ガルムおじさんだ! どうしてニンゲンがここに?」
俺たちを取り囲むように集まって来たのは、動物たちの中でも好奇心旺盛な子供たちだった。
もちろん、ガルムの時と同様にこいつらも喋る。
「お前たち! 元気にしていたか?」
「うん! でもなかなか帰って来ないから、ヒメサマ心配してた!」
「そうか……我はこの者たちを案内していて、少し遅れてしまったのだ。人系の種族ではあるが、我が認めた者たち。お主らに危害を加えたりはしないだろう」
無邪気に走り回ったり、好奇心旺盛に俺たちを観察したり、側から見ればなんとも微笑ましい光景だ。
ただなんというか……
「なんだろう……やっぱり動物が喋るのって慣れないな」
「まだそんなこと言ってんのか?」
「慣れろ、少年」
ガルムとレイジからそうは言われたものの、動物が喋るって、ファンタジーじゃよくある設定だけど、実際に見るとかなり奇妙……ん?
俺はあることに気がつく。
「おい、レイジたちは教会の奴らが喋っていた言葉を理解できなかったって言ってたよな?」
「そりゃあ、世界が違えば話す言語も違うでしょ?」
「だったらなんで、ガルムたちは日本語で喋ってるんだ?」
「えっ……ああ、確かに」
ガルムたちは明らかに俺たちとは別の世界に住んでいた住人。
もちろん話す言語も違うはずだが、今までなんの違和感もなく日本語で話していた。
サキの場合は──
「私の場合は、こっちの世界に来てから現地の人に教えてもらったけれど、確かにそう考えると変よね」
だそうだ。
そしてそのことについて、ガルムが話してくれた。
「我々は姫様から、精霊の加護を授かっているのだ。この力は様々な種族が共存するここポラリスで、言語の壁を無くすため、姫様の力によってあらゆる言語が自身の習得している言語に変換される。おそらくそれのせいだろう」
何その便利な機能。
Go◯gle先生顔負けじゃん。
いやちょっと待て……それよりもだ。
「この世界精霊までいるのかっ!?」
喋る狼、怪しい宗教団体、喋るその他諸々、そして精霊。
今はまだましだが、段々と登場人物がカオスになってきているのは気のせいだろうか。
「そうだ、姫様は精霊であられるのだ。なるべく失礼のないようにな?」
少し強めにおされて注意を受けた後、俺たちはガルムに連れられ、ポラリスの中心へと向かった。




