09 味あり
ケイと体の関係を持つ様になって、一日に何度も求められるけど、体は大丈夫?
本人は平気だって言うし、実際平気そうだけど。リハビリも頑張って、手足を持ち上げたり、体を起こしてる時間を延ばしたりしてる。
だから私もちゃんと、服を着る暇がある。
「この後、食事だよね?」
「うん」
服を着ながら、ケイに返事をした。
「アミノ酸タブレット、砕きたいんだけど、そんな道具ある?」
「道具?どんなの?」
「あの錠剤が砕ければ、なんでも良ーんだけど」
砕けるの?
「ケイが砕く必要があるの?それとも誰かが砕いても良い?」
「頼めるなら、誰かに砕いて欲しー」
「そうよね。まだそんなに力が出ないでしょうし」
腕に限らず、まだ全然筋肉がない。
宇宙でも筋トレはするらしいけど、ケイは病気になってからずっと、ベッドに寝かされてた。
地球でも寝たきりだと、筋肉が落ちるらしいし。
「いや、これでも錠剤を砕くくらいは、出来ると思んだけどな」
「そう?どれくらいに砕けば良い?粉々?微粒子?」
「細かい方が嬉しーけど、食事に掛けて食べるから、息で飛ばないくらいで」
「え?食事に掛ける?」
私が驚いてるのに、なんでケイも驚いた顔してるの?
「あれ?もしかして、ここでは禁じられてる?」
「そんな事ないけど。禁じる理由も分からないし。でも、必要量は摂取しないと、体が保たないわよ?」
「大丈夫。粉にしても全部食べるから」
「そう?それなら分かったわ」
錠剤飲むの、苦手だったのかな?
ミラロイド用のアミノ酸タブレットを粉にして貰ってお皿に入れて、食事と一緒にケイのとこに持って来た。
「これで良い?」
「うん。ありがと」
良い笑顔。嬉しそうだ。
ケイが体を起こすのを手伝って、腿の上にトレイを置く。
トレイの上には人間用の料理と粉の入った皿が載ってる。
ケイは皿を持つと、おじやの上に粉を掛けた。ミルクにも果物にも、少しずつ掛けてる。
振り掛けってヤツ?
ケイは粉の掛かったおじやをスプーンで良く混ぜた。
「そうやって食べるの?」
「そー。こーすると、味がするんだよ」
「え?人間用の食べ物に?」
人間用の食べ物にも甘いとか辛いとかの味はする。美味しくないだけで。
「ほら。試して見る?」
そう言うとケイはスプーンにおじやを掬って、私に差し出す。
確かにいつもと違って、少し良い匂いがする。
口を開けて、一口食べさせて貰った。
「ホントだ。味がある」
「だろー?ここではこー言ーの、やらないの?」
「うん。誰もやってないよ。よそでも見た事ない」
「へ~、そーなのか」
「これなら食べやすいね。宇宙ではこうやって食べるの?」
「砕くのに時間が掛かかるから普段はやらなかったけど、食欲がない時も食事を残すと後の作業に影響するかも知れないからね。こーすると結構食べられたんだ」
「ケイが見付けたの?」
「このやり方?いや、誰かに教わったんだと思ーけど、調子が悪い時はみんなやってたし」
ケイの仕事、休日は無しだって言ってたから、体調崩す事も結構あるんだろうな。
「これ、誰かに教えても良い?」
「うん?全然構ーないよ?」
「ありがと」
私のお礼の言葉に、ケイが目を細めた。
「どーいたしまして」
また、眩しい笑顔だ。