08 眩しい朝
目を開けたら、目の前にケイがいた。
「おはよー、シー」
そう言ってケイは私の頬に手を伸ばす。
「おはよう、ケイ」
私はケイの手を握って頬に当てたけど、ちょっと待って?
「ケイ?!今、朝?!」
体を起こすと、窓の外が眩しい。
「あー。日は昇ってるね」
「ゴメン!昨夜は大丈夫だった?」
ケイの初めては、思った通り結構早く終わって、その後ケイは疲れて眠った。
まだケイは筋肉がないのに、私は手加減出来なかった。
その上、朝まで寝こけるなんて。
「凄かった。シー。ありがと」
「あ、いえ。こちらこそ」
ケイが手を伸ばして来る。その手に引かれて、もう一度横になった。
「坊っちゃんの命令、回数ってあった?」
「命令?ううん。回数は書いてなかったけど?」
「そーだよね。頻度もなかったよね?」
「頻度?うん」
「ねー、シー?それって、1回だけって意味だと思ー?」
「報告するのは1回で良いと思うけど?」
「それはつまり、2回目以降は自由で良ーのかな?」
「え?まあ、多分?」
「俺はまだ何回も、シーが欲しーんだけど、どーかな?」
「え?どうって・・・」
もちろん嬉しいけど。
「お願いの仕方とか分からないけど、お願い。俺とまたして?」
「あ、うん」
「ホント?良ーの?」
「うん。良いわよ?」
「良かった。それでシー?予定は?この後、空いてる?」
「予定は大丈夫だけど、それって今からって事?ケイは体、大丈夫なの?」
「ほら」
そう言うとケイは私の手を毛布の中に導いた。
「いや、ご立派になってるのは毛布の上からでも分かるけど、初めてだったでしょ?まだそんなに筋肉ないんだし、疲れてないの?」
「疲れたよ?でも、シーが欲しー。シーは疲れた?」
「ううん、大丈夫だけど」
「シーはあと何回出来る?」
「え?何回?今?」
「今」
「いや、ちょっと待ってよ。昨夜はケイ、あの後、夜中に起きなかったの?」
「あー」
「病気の痛みは?」
「あるにはあるけど、いつになく痛みは弱いよ」
「それならこの後、痛くなるかもよ?」
「うーん、そんな感じはしないけど」
「でも、少し休んだ方が良いんじゃない?」
「昨夜は久々にぐっすり眠れたから、今は絶好調なんだけど?」
「そうなんだ。絶好調なんだ」
「絶好調。だから良ければ、もー一度、シーが欲しーんだけど、ダメかな?」
老けて40半ばに見えるケイが、甘えてくる。もちろん直ぐにも頂きたいけど。
「本当に、大丈夫ね?」
「あー」
「痛みが出たり、具合が悪くなったら、直ぐに言ってよ?」
「分かった」
「あと、1回だけだからね?」
「忙しーの?」
「そうじゃないけど、ちゃんとご飯も食べないと」
「その後は?」
吝かではない。吝かではないけどね?
「急にやり過ぎたらダメよ」
「分かった。そーだな。俺は寝てるだけだけど、シーは大変だものな」
「まあ、そうでもないけど」
「俺、リハビリ、頑張るよ」
「え?あ、うん」
「それで、シーを下にさせる。普通はそーなんだろ?」
「普通って言うか、基本パターンよね」
「そしたら、シーの負担も減らせるし」
「でも、際限なくはダメだからね?」
「分かってる。でも、隣に寝てくれるのはどー?夜だけでも良ー。シーが疲れてるなら、シーを求めないから」
「まあ、それは、うん」
疲れてる時に、不意に欲しくなる事はあるけど・・・疲れをケイに気付かれなければ良いか。
「ありがと」
「うん」
ケイが疲れてたら、私がガマンすれば良いんだし。
「シー?」
「なに?」
「昨夜は凄く気持ちが良かった。気持ち良ーってまさにあれなんだな」
「そう?良かったわ」
「昨夜は俺ばっかり気持ち良くしてもらっちゃったけれど、これって俺のやりよーによっては、シーも気持ち良くなるんだろ?」
「そうね。私もなるわよ?」
「そーか。シーにも気持ち良くなってもらえる様に、頑張るよ」
「そう。その気持ちが嬉しいわ。ありがとう」
私、触覚2倍だから、結構チョロいはず。
それに比べてケイは触覚5分の1だから、私も頑張らないと。
違う、それだけじゃない。
ケイは性徴抑制型だし、性欲抑制もされてるんだ。
昨夜は特別で、普通ならそう上手くいかないかも知れない。
「シー?」
「うん?なに?」
「なんて言ったら分からないんだけど、なんて言ーか、もっと早くシーに会いたかったし、一日でも長くシーと生きたい」
ヒュッと喉が狭くなる。
声を出すのに唾を飲み込んだ。
「そうね。私もケイと、一日でも長く一緒にいたいな」
「そー言って貰えて嬉しーよ。病気になって、職務も続けられなくなって、それなのに廃棄もされなくて不安だったけど、シーに出会えて始めて病気になって良かったと思えたよ」
「大袈裟だけど、私との事がそんなに気に入って貰えたなら良かったわ」
まだ全然、長く生きて身に着けたテクニックを味わって貰ってないけど。
「それもとても良かったけど、そーじゃなくて、シーに出会えた事が俺は嬉しーんだ。本当に、シーに出会えて良かった」
そう言うとまたケイは手を伸ばして来て、私の頬に触れた。
その手を上からそっと押さえる。
「ケイの病気を良かったとは思えないけど、私もケイに会えたのは嬉しいわよ?」
「ありがと」
ケイは満面の笑みで顔を近付けて来て、オデコ同士と鼻同士をくっ付けた。
ちょっと、眩しい。