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05 進行

 ケイの問題に付いて、坊っちゃんに報告を送ったけど、何の反応もない。

 坊っちゃん、どこにいるの?


 取り敢えず、ケイの体を毎日拭いてるけど、休み休み。

 ケイも休ませるけど、私もね。私は性特化ではないけれど、それなりに性欲強化されてるから。


 ケイの問題の原因が分からないのに、人間平均よりその気になり易い私が、我を忘れてケイを襲ったりしたら、ケイ、死んじゃうかも知れないし。


 それと、しばらくしてから気付いたけど、問題が発生してから少し経つと、ケイは股間を痛がる。

 性徴抑制型に作られたケイが、問題をあんなに突っ張らせてる事自体、病気の所為の筈。それが病状を悪化させてるかも知れないと思うと、とても心配。

 痛覚10分の1なのに、ケイは顔を蹙めるし。


 それなので、ケイの髪をまず洗う。そうすると高確率で、ケイはうつらうつらする。

 その間に拭けば、ケイの体もそれほど反応しないし、ケイの口から色っぽい声もあまり漏れない。私もなんとかガマンできる。



 ここに来てからケイは、あまり良く眠れないらしい。


 初日は髪を梳いただけでケイは寝息を立てたけれど、あれは初日だけだった。

 髪を梳くのは今も気持ちが良いみたいだけど、眠るまではいかないみたい。髪を洗うとようやくうつらうつらする。

 もしかして初日みたいに、髪が汚れてないと効果が薄い?

 でも毎日の洗髪を今さら()められないし。


 それに老化も進んでいるみたい。初日の映像と比べると、直ぐ分かるほど老けた。

 皮膚が重力に引っ張られて、余計にそう見えるのかも知れないけど。


 リハビリもあまり進んでない。


「一人でトイレに行ける(よー)になる前に、命が尽きそーだよ」

「縁起悪い事、言わないの。少なくとも、坊っちゃんが帰ってくるまでは、生きてないと」

「坊っちゃん、どこにいるのか分かった?」

「全然。ご主人様にも尋ねたんだけど、返事がもらえてないのよ」

「いつ戻るのかも分からないって事だよね」

「だから、頑張って長生きしなきゃ」

「ふっ。頑張らなくても長生き出来る(よー)に、作られた筈なのに」

「それを言ったら私だって、この家に来た時は、こんなに長く働くなんて思ってなかったわ」

「そうか。自分が不老(ふろー)だなんて知らなかったんだもんな」

「そうそう。最初言われたときは、笑えない冗談だと思ったし、信じなかったわ」

「今は?信じてる?」

「まあ、そこそこ?」

「そこそこ信じるって、なんだ?」

「死ぬまでは信じるかな?って言うか、普段は不老な事、忘れてるし」

「ふっ、そーだよね。確かに俺もそーだった」


 ケイの笑う顔が、少し寂しそうに見える。


 不思議。

 ミラロイドは普通、死を恐れない様に作られている。それは不老のシンプロイドも同じ。

 なのでケイが寂しそうに見えるのも、死を感じてではない筈。実際、会ったばかりのケイは、死を望んでさえいる様な事を言っていた。



 坊っちゃんもご主人様も当てにならない。このままだと埒が()かない。

 それなので、自分のコネを使って、医者を喚んだ。自腹だ。


「私は人間向けの医者だから、ミラロイドなんて分からないぞ?」


 そう言うのはシンプロイドのディイ。


「医者は医者でしょ?」

「まして不老なのに老化するシンプロイドなんて、研究所やメーカーに頼んだ方が良いんじゃないか?」

「ご主人様からも坊っちゃんからも返事がないのに、勝手にそんな事、出来ないでしょ?」

「勝手に医者に診せるのは良いのか?言っておくが、治療なんて出来ないぞ?」

「取り敢えず見るだけ見てよ。その結果を坊っちゃんに伝えてみるから」

「はぁ・・・分かったよ」


 この家まで来てるのに、まだ文句を言って。

 何も言わずに、スッとやってくれれば良いのに。スッと。



 ところが、ディイが診ると問題が発生しない。

 なんで?


 慌ててディイには、坊っちゃんが撮らせてるケイの映像を見せた。問題もしっかり映ってる。


「映像を見る限り、人間男性と同様の反応に見えるけれど?」

「でもケイは性徴抑制型なのよ?」

「性徴抑制型と言っても設計はピンキリだし、個体差もある」

「そう言うもんなの?」

「知らんけど」

「なんでよ!」

「私は人間向けだって言ってるじゃないか?シンプロイドなんて知らんよ」

「自分もシンプロイドのクセに」

「それを言うならシイもシンプロイドじゃないか。だいたい医者を喚んでおいて、カルテも何も用意してないってどう言う事?」

「カルテって?」

「患者がどんな病気か、どんな状態か、分析した結果が載ってる資料だよ」

「病気はね、ガンだって」

「いやいや、ガンって言ってもね?悪性腫瘍にも山ほど種類はあるから」

「山ほど?ディイは詳しいって事?」

「人間の場合、悪性でも良性でも腫瘍は治療してしまうから、私は教科書でしか見た事がない」

「つまり?」

「知識レベルはシイとそれほど代わらないって事だ」

「なんでよ?医者でしょ?」

「人間向けのね。ミラロイドの腫瘍なんて、聞いた事もない。黎明期に治療方法確立の為にそう言うミラロイドを作ろうとした話はあったけれど、コスト面で臓器の分化誘導には敵わなかったし」

「もっと、分かる様に言って」

「だから、私には分からないし、メーカーや研究所に問い合わせろって言ってるんだ」

「メーカーとかならケイを治せるの?」

「診察や調査はするかもね。予算が付けば研究もするかも知れない。しかし、治療はする筈ないだろう?」

「なんでよ?!」

「新しいのを買った方が安いからだよ。分かってるだろう?」


 結局、大した事もしないで、高い往診料だけ取って、ディイは帰って行く。

 クスリの一つも処方しない。


「ミラロイドのクスリなんてないだろう?」


 ミラロイドは病気にならない設計だから、そりゃそうだけど、だから医者を喚んだのに!

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