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04 ケイの問題

「ねえケイ?体を拭かない?」

「体を?(かま)ーないけど、何で?」


 ケイが不思議そうな顔をする。なんでってなによ?


「今は入浴出来ないと思うから、拭くだけ拭こうよ」


 私は嗅覚が人間平均の2倍に設計されてる所為か、ケイの(にお)いは気になる。


「それって、皮膚の老廃物(ろーはいぶつ)を除去する為?」

「そうね」

調整槽(ちょーせーそー)は?」

「調整槽はこの家にもあるけど、誰も使わないかな?みんなお風呂とかの方が好きだからね」

「好き?・・・そーか」


 ケイは渋い表情をする。

 まだ製造されて20年なのに、老けた見た目に似合った渋さだ。


「ケイが調整槽を使えるのは、重力に慣れてからみたい。なので今は、体を拭くだけで我慢してくれる?」

「もちろんだよ」


 肯くケイの着ている物を早速脱がせ始める。

 アバラが浮いてる。


「寒くない?」

「大概は寒くない。シバリングも抑えられてる」

「シバリング?」

「うん。寒さで指先が震えると、作業影響(さぎょーえーきょー)が出るから」

「ふ~ん?」


 腕に濡れタオルを当てて、(こす)ってみる。

 皮膚の強化はされていない筈だから、あまり強く擦ったらダメな筈だけど。


「痛くない?」

「いや、全然」


 痛覚、10分の1だもんね。当てにならない。

 タオルを押し付ける力を意識して弱めにする。


「どう?気持ち良い?」

「気持ち()ー?」

「もしかして、気持ち良いって良く分からない?」

「言葉は知っているけど、今ひとつピンと来ない」


 触覚、5分の1だもんね。


「少なくともくすぐったくはないわね?」

「今のところは」


 くすぐったいは分かるのかしら?訊いといてなんだけど。


「どう?片腕だけ拭いたけど、大丈夫そうなら他も拭くけど、拭く?」

「あー、頼む。もしかしたら、気持ち()ーってこれかな?」

「ホント?それなら良かったわ」


 タオルを濯ぐと水が結構汚れる。

 反対側の腕を拭いて、頭を抱き抱えて首筋をふいて。頭も洗いたいな。

 耳の(うしろ)とか耳の中とか、弱い力でそっと拭く。耳の穴も掃除したい。


 そのまま顔もそっと拭く。

 生え際、少し後退してるのかな?

 眉毛も睫毛もツヤ消し?そう思って見るからかな?

 でも、体臭は感じるけど、加齢臭じゃないな。


「あ、ゴメン。痛かった?」


 ケイの顔が少し逃げた。


「いや、くすぐったかった」


 おお。やっぱりくすぐったいのは分かるんだ。


「眉毛?睫毛?」

「目の(まー)り全体」

()めとくね」

「いや、大丈夫(だいじょーぶ)。やってくれ」

「そう?でも急に動くと目を(つつ)くかも知れないから、くすぐったかったら言ってね?」

大丈夫(だいじょーぶ)だ」


 大丈夫?もしかして、痛くなければ突いても大丈夫とか思ってないよね?

 取り敢えず、大丈夫だと言うから、そのまま拭き続ける。


 目尻のシワとシワの間を拭く。

 鼻筋から小鼻。

 ケイがピクリとする。

 上唇をゆっくりと。

 ケイの口が半開きになる。

 口の中にタオルを入れたらやり過ぎよね?

 それから下唇。

 ケイの口から小さく声が漏れる。

 ふふふ。ここか?ここがええのんか?


 でもケイ、性徴も性欲も抑制型だったわよね?そもそも触覚5分の1だし、そう言う意味では感じない筈。


 顎から喉を攻めて、異変に気付いた。

 あれ?乳首?

 う~ん、やっぱりそう言った意味で感じてる?


「ちょっと待ってね」


 そう断ってケイの設計を確認する。

 うん。性徴抑制型だね。性欲も抑制されてる。触覚5分の1も間違いない。シバリング抑制も載ってるけど、何の事かは後で調べよう。


 もしかしたら、性的じゃない気持ち良さも、同じ様な反応をするものなのかな?

 私は性的な気持ち良さを感じる様に作られてるから、良く分からないけど。


 あ、そう言えば、肩を揉んで貰った事が昔あって、あれは気持ち良かったな。あの時はなんか違う感じだった?・・・ダメだ。覚えてないや。

 そうそう、ミラロイド用の料理を食べさせて貰った時、ちゃんと味がして、口の中がすっごく気持ち良かったけど・・・いや、あれは性的興奮に近かったかな?


 胸を拭くけど、人間並みに敏感だ。5分の1とか抑制型とかの感じじゃない声が、ケイの唇から漏れる。


 足の指先から付け根に向けて拭いていくと、やはり感じるべき所で感じてるみたい。


「排泄装置、外すわよ?」

「・・・うん」


 重力の所為で歩いてトイレに行けないから、ケイの股間には排泄物を処理する装置が付けられていた。

 それを外すと予想通り、モワッと籠もった臭いが鼻を突いたけれど、それどころではない。

 ケイは重力の所為で手も足も上げられないのに、屹立してるわ。


「ねえケイ?私が知ってる性徴抑制や性欲抑制型のミラロイドは、怒張させるのって凄く大変なんだけど、ケイはいつもこんな感じなの?」

「こんなって、俺の股間の事?なんかすっごく突っ張って重たいんだけど、どーなってるの?」

「どうって、ご立派になってる」


 性徴抑制型だと男性器は小さいはずだけど、それこそ人間並みになってる。

 これって、問題よね?

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