18 死と生
ケイが死んだ。
目が覚めたらケイの体が冷たかった。
最近はケイの手足が冷えてたから、最初はそれかと思った。
でも呼び掛けても反応しない。揺すってもくすぐっても愛撫しても反応しない。
端末を確認すると、ケイのバイタルサインが失くなってる。
配線を確かめる迄も無く、ケイの心臓も呼吸も止まってる。
急いで人口呼吸とマッサージをする。
私では力が足りないかも知れないと思ったけど、トリプロイドならイケるかも知れないと思ったけど、誰にもケイを触らせたくなかった。
部屋をロックして、AEDも使って、ケイの蘇生を試した。
だって、ガンの末期って、こんなあっさりじゃない筈。
ずっと昔の記事だけど、凄く苦しむ筈。
だってケイは、痛み止めも麻酔も人間用しかないからケイは、もし死が迫ってたらケイは、凄く苦しむ筈。
坊っちゃんからは、さすがに直ぐに連絡があった。
ケイの死には、やっぱり「分かった」との一言だけだけど、赤ちゃんは産めとある。
坊っちゃんからディイの主人に依頼が行って、ディイが私の出産を助ける事になった。
ディイが来て、私のお腹を見て、溜め息を吐いてた。
ディイはケイの事も言ってたけれど、ケイは隠してディイには見せない。
だってディイ、ミラロイド用の医者じゃないでしょ?ミラロイド用の医者でも見せないけどね。ケイはもう、死んでるんだから。この後は医者の出番なんてないよ。
坊っちゃんの命令で、ベーの部屋が力尽くで開けられたそうだ。
坊っちゃんにはアーからも連絡が行ってて、アーも不活化が始まってたらしい。
アーはベーのベッドの上で、ベーに寄り添って死んでたそうだ。
ミラロイドの死体は腐らないので、これからベーとアーの解体もしなくちゃと思ってたけど、アーが死んでからも随分と経ってたからか、二体とも蝋化が始まってたらしい。
珍しいので、そのままメーカーに送る事になったとか。
もしかしたら標本になるのかも知れないと聞いた。
ご主人様からは、ずっと連絡がない。
もしかしたら出先で推しを見付けて、貢いでるのかも知れない。
ケイは全部私のものだけど、食べれない部分もある。骨とか髪とか爪とか。
それらは細かくして、畑に撒いた。
その畑では、ミラロイド用のお芋を育ててる。ずっと昔にどこかから貰ったお芋だ。
そのお芋はミラロイドと同じ様に、染色体のらせんがオリジナルと逆向きになってる。つまり普通に育てても、栄養不足でちゃんとは育たない。
でも、ケイに含まれるアミノ酸があれば、このお芋も育つ筈。
そして育ったお芋を食べれば、食べれなかったケイの部分も摂り込める。
それ以外のケイの体は、ミラロイド用のアミノ酸タブレットの代わりに、毎日食べてる。
あ・・・
ケイ?
今、赤ちゃんが動いたよ。




