もやしパラダイス
もしゃもしゃもしゃもしゃ。
マヨネーズをかけただけのゆでもやし生活三日目。
ハンバーグ弁当をあきらめたあの日からしばらく。
わたしはもやしマスターへの道を歩んでいた。
カレー、ラーメン、寿司……
もやしマスターには関係ないものたちよ。
プリン、アイス、もんじゃ……
これ以上わたしの頭に浮かぶな。
もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃもしゃ。
だんだん味覚もなれてきた。
もうもやししか食べなくても良さそうだ。
もやしプリン。もやしラーメン。もやしアイス。
大丈夫、もやしだけでもいい。
はっ、もやしハンバーグ弁当……?
やめてやめてやめて!
まじで我慢できない!もやしハンバーグ弁当だけは……!
もやしハンバーグ弁当だけは……!
「ありがとうございましたー」
うふふ。
ゆでもやしをのせたハンバーグ弁当。
わたしはついにやってしまった。
たべる。
うん、めっちゃおいしい!
その夜、夢を見た。
ハンバーグ弁当は泣いていた。
「なぜ、もやしだっておいしいから、いいと思うよ?」
「ふざけないで……信じられない……」
ハンバーグ弁当は泣いている。
「組み合わせたっておいしいのに!」
「もやしマスターのあなたになにがわかるの!」
「!?」
ハンバーグ弁当……。
なんで……。
泣きはらしたまま目を覚ました。
もやしはまだある。ハンバーグ弁当のカラはすててある。
ゆでもやしの日々がまたやってきた。
ハンバーグ弁当……。
「もやしマスターのあなたになにがわかるの!」
……ハンバーグ弁当。
「ありがとうございましたー」
こんどはカレーを買ってきた。
もやしマスターのわたしの作るはもやしカレー。
うん。
もやしカレー、おいしい。
お読みいただきありがとうございました。