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第八十八話 月影一心流での打ち合い

俺は体調も良くなってきたので軽くエクスさんと木剣で打ち合う。

エルフ達も周りで見ている。


俺は小手調べに軽剣術で打ち合い始めている。


「ふむ、まだ成熟しきっていない身体だから片手剣主体の軽剣術は比較的合っているのかもしれんな? だが、重い一撃を入れられた時、どうする? ハァッ!」


このおじさんただの打ち合いに覇気を込めた一撃を放ってきた。 余程の馬鹿だ!

咄嗟に騎士流剣術の構えで受け流す(パリィ)

力一杯に踏み込み斬り込みに掛かる。

だが、その程度の事は読まれている。 それも想定内だ、エクスさんが受け流しの構えを取った事を確認した俺は即座に斬り込みを止め側面へと回り込む。


スッっと鞘が無いが腰に木剣を構える。


「打ち合いの最中に武器の構えを解くとは舐めているのか? それとも休憩か?」


黙って隙を見つけた俺はここだと言わんばかりに技を入れる。


「月影一心流秘儀、閃弧(せんこ)


この技は俗に言う、居合だ。 それの月影一心流に改良された技だ。

その剣速にエクスさんの顔はあからさまに曇った事が分かる。


「ちっ! それは読めないな! 剣の軌道が沢山見える。 どう避けても対応するってか!」


やはり攻撃が視えているみたいだ。

エクスさんが強く地面を踏みしめ思いきりバックステップをする。

俺が待っていたのはこれだ。

次の技に繋げる為にはここで退いてもらう必要があった。


「待ってましたよ。 月影一心流秘儀、突月(とつき)・改!」


突月は剣を捻りながら刺突をする月影一心流にある必殺の刺突技だ。

比較的誰でも使う事は出来るが実際に使っている事は見たことはない。 多分、危険なうえに得物に負担が大きいからだろう。


ただの突月であれば届く範囲は短かっただろう。 だが、そこに縮地を合わせる事でかなりの距離を補う事に成功した。

実際に試したのはこれが初なんだけどね…。


「なんという剣技! 瞬閃!」


しかし、その瞬閃は突月を弾くことは出来ずに俺はエクスさんの五十センチほど手前で止まってしまう。

ただ距離が足りなかったのだ。

これに真っ先に気付いたエクスさんは俺の木剣を払おうとする。

剣を払う事に対する技もあるのだ。


「月影一心流剣技、竜巻(たつまき)


剣を払おうとする相手の剣の勢いを利用し、巻き込み、打ち上げる。

これが竜巻。 戦場では殆ど使う事の無い技だが一騎打ちならまだ使う事はあるだろう。


木剣を手から放してしまう事になったエクスさんは盛大に笑い始める。


「くはは! 見たか! これが勇者の剣技! 軽い打ち合いでこれだ! 魔王? 魔神? 恐るるに足らず! 彼を見よ! 次代の勇者を!」


わざとやりやがったなこの野郎…。 どうしてくれるんだよ…。

すると、どこからともなくサリィ王女殿下がやってくる。


「どうぞ、お顔をお拭きになってください」


「サリィ王女殿下! ありがとうございます!」


「サリィ」


「えっ?」


「私は生まれはどうあれ、今はテイル様の侍女ですから。 自分に仕えている者に対して敬語や敬称を使ってはいけません」


「あ、あぁ、わかったよサリィ…。 これで良い?」


「テイル様、上出来です」


その様子を遠目に見ていた三賢者達が居た。


「なんや、サリィちゃんはテイルちゃんにゾッコンかいな?」


「それだけではない…。 皆テイル君に惹かれておる。 早くテイル君は成り上がって貴族にならんとなぁ…。 そうすれば一夫多妻もありじゃし」


「じゃからってあの好かれようは天職は錬金術師じゃなくてタラシの間違いじゃないのかの?」


「あれで無自覚なんやろ? せやったら、『無自覚タラシ』なんちゃう?」


「それは良い!」


三賢者のテイルに対する変な評価も広がりつつあったのだった。


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