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第八十六話 起床

意識が途絶えてからエルフの里へと運ばれた俺は数日眠っていたらしい。

主観だがこのままだと全身の細胞が危うく焼き切れる所だったと思う。

増援が来てくれて、魔王が撤退してくれて助かった。


エクスが近寄ってきた。


「遠くから見てたがあの剣技…なんだ? あれは我でも扱えない」


「月影の事ですか? 俺のオリジナルの流派(・・・・・・・・)の奥義です。 気付いたら使えました」


「ふむ。 そうか、だが君は魔術も織り交ぜるのだろう? 凄いな。 底が見えん。 聖剣を持っていれば魔王を討ち滅ぼしていたやもしれんな」


「救国の英雄にそこまで言われると…かなり照れくさいですね」


これは本心だ。 幼少の時に聞き及んだエクスの邪龍討伐報告。 そしてその武勲。

胸が焦がれた。


街をも覆いつくすような巨大な邪龍を騎士団、冒険者を率いて長時間戦い、怪我人は出たものの犠牲者を出さずに邪龍の首を討ち取ったと言うその武勇。

この世界に生きる全ての種族が知っている話だ。


先見の眼と呼ばれるスキルを持っており相手の動きをコンマ何秒か早く先取り出来るためエクスは全て邪龍の攻撃を予知し、受け流していたらしいが定かでは無い。


「有名な話ですので憧れて居ました。 俺が剣を握るのはエクスさんに憧れているからなんです」


「それは光栄だ。 賢者や龍王の助力があってもあれだけ魔王を圧倒出来ていたのだからな、俺を追い越してしまう日も来るかもしれないな」


「そ、そんな! 恐れ多い!」


「なんや、テイルちゃん言うたか? うちは剣はからっきしやけど、そない強いならエクスに弟子入りでもしたらどうや?」


「ジャービルの提案はもっともだがな、それは国家問題になりうる話だからな?」


「でも、エクス? あんたの居る国やったら問題ないで? 『勇者を弟子にした』なんて言えば教皇も大喜びや」


エクスの居るアレスディア教国は創造神だけでなく、勇者信仰、妖精信仰、精霊信仰と様々な信仰がある。 どれも起源は創造神による物なのではあるが。

なので、『勇者を弟子にした英雄』ともなれば教皇からすれば鼻が高いことは間違いないだろう。


「む、それもそうか…」


「ですが、俺の意思は…。 俺は魔法学院生ですし…。 それに、基本的にはアストレア王国から出ませんし…」


「そうか、ならば心配ない! 一人前にするまでアストレア王国に住むと教皇に許可を得て来よう!」


「俺の意思は! 良いんか! それでっ!」


「あーっはっはっはっは!」


俺は咄嗟(とっさ)にマーリン様とガイル様に助けを求める為に視線を送る。

そっと視線を逸らされた。

ならば頼みの綱は、メーティル先生!

今、去って行ったね? 扉をそっと閉めて出て行ったねあの薄情者!


他のメンツは権力が無いしどうしようもないとして…。

なら、サリィ王女殿下は!


いーなーいー! これを見越して最初から居ないのか!?

俺の侍女(メイド)だろ!? 一国の王女だろぉ!?


もうだめ、疲れた…。


俺は精神的に疲れ切って、また眠りに落ちてしまったのだった。


そんな室内の様子を、外から窺う(うかがう)影があった。


私は過去に三賢者のジャービル様に「弟子にならへんか?」と言われたことがあります。

ですがお断りしました。

ですがしつこいのです。

朝も、昼も、夜も! 私が王女(・・)だというのにずっとずっと。 あの時とは髪型も出で立ちも違います。 バレる事は無いでしょう。


ですが一末の不安は拭えません。 テイル様には私を護る盾になってもらうのです!


「うふふ...」


不気味な少女の笑い声は誰も知らない夜の闇に消えていった。

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