表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/384

第八十五話 魔王撤退

「ほう、いくら位が低いとは言え魔神を討ち倒すか、勇者よ」


「あの程度ならそこまで苦戦するほどじゃなかったけどね。 魔王(あにうえ)とは違って沢山鍛えて来たからね」


「抜かせッ」


明らかに魔王が感情をあらわにし皆驚きながらも各々戦闘をしている。

そんな俺は魔王に対しオルナの時と同じ様に縮地で近づく。


「瞬閃!」


「無駄だ!」


飛び退く様に回避する。 すると後方の魔法師達から一斉に魔法が放たれる。

その威力は中級、戦略級と様々だが重なりあい、威力が増幅している。


「効くではないか…」


俺とメイカは魔法師の詠唱開始に合わせ両サイドから縮地で斬り込む。

すると、剣が素手で押さえられてしまう。


「二度も同じ手は食わんし、余は()えている」


眼まで良いのかよ!? 反則じゃねぇか!

俺は咄嗟(とっさ)にバックステップで離れる。

剣は握られた訳では無かったので武器の損失は無かった。


メイカの方はその場で打ち合って居るようだがすべて片手でいなされている。

錬金術による身体強化を二重、いや、三重に掛ける。

頭が割れる様な頭痛がする、これは長時間の行使は無理だと思う。

だが行くしかない、俺はより高速の縮地で魔王の前に出ると瞬閃のモーションをする。


…だがそれは偽動作(フェイント)なのだ。

現に危険と判断した魔王は素早く腕を振り下ろし剣を振り払いに来る動作を見せている。

頭が割れそうになる中、もう一度高速の縮地を使い魔王の後ろに回る。


これを絶好のタイミングだから逃すまいと三賢者様やドーラ様、メーティル先生がライトニングノヴァやジャッジメントノヴァ、メロディックカオスなどの魔法をここぞとばかりに打ち込む。



流石の魔王もこれにはかなりのダメージが入ったようで狼狽(うろた)えている。

俺はこの隙に深く踏み込み、狙いを利き腕だった右腕に絞り込み、超集中し気を貯め込む。


違和感に魔王が気付いたのだろう。

だが、もう遅い。


「月影一心流奥義、月影!」


狙い通り魔王の右腕が切断され、魔王が悲痛な叫びを上げる。


「きさまああああああああああああああ!」


残った左腕で古代の魔法を放とうと詠唱を始める。

御伽噺(おとぎばなし)では、その威力は都市が滅びる程の物と言われている。


俺はもうとうに限界が来ていたのだ。 立つこともままならない。

だが、この詠唱を完成させてはならない。

メイカも縮地でこちらに来ようとするが足を負傷したのか上手く足が動かせず、間に合いそうにない。


ここで魔王が撤退してくれればよかったのに…。 俺の判断ミスだ…。

兄上の俺への執着が余程強いのだろう。


魔法が完成しようとした刹那。


「今代の勇者よ、我らが来たからにはもう大丈夫だ。 よく耐えた」


突如として謎の声が響き渡る。


「ワレハリュウジンノオサ『ガガル』」


「うちは三賢者の『ジャービル』や、よろしゅうな」


「我こそはドラゴンスレイヤーにして救国の英雄『エクス』! 魔王よ! いざ尋常に…。 あれ? 魔王どこいった?」


魔王は伝説の転移魔法によって、そそくさと撤退してしまったのだ。

それはそうだろう。 エクスには聖剣ほどではないが精霊剣と呼ばれる物があり、邪の者に対し有効な攻撃を与える事が出来るという。

それは試された事はないが魔王にも有効なのかもしれない。

それを、魔王は器である兄上の知識から知ったのだろう。


そして俺は、ここで意識が途絶えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ