第七十五話 邂逅
学院へと向かっていた。 授業を受けるためだ。
基本的なことは分かり切っているのだが、受けないと卒業出来ないらしいので仕方ない。
そして、今日はマキナ嬢と一緒に登校している。
学院に着くとマリアとエメリーが先に来ており、テイルに声を掛けて来る。
「「テイル君、おはようございます!」」
「あぁ、おはよう」
「テイル君…そちらの方は…?」
マリアが訝しげに話しかけて来る。
「こちらはクリスエル公爵家のご令嬢のマキナ様だよ」
「マキナ・フォン・クリスエルですわ。 以後お見知りおきを。 テイルさんに将来的に嫁ぐ予定ですの」
「「えぇぇぇぇぇ!」」
マリアとエメリー、二人の声が重なる。
視線が痛い、なんか凄い女たらしみたいじゃないか?
「安心してくださいまし。テイルさんは将来嫁の貰い手は一人や二人じゃ収まらないとおもいますわよ。 あなたにもチャンスはありますわよ」
「はい!」
何言ってんの!!!
チャイムが鳴り始める。 俺達はそんな馬鹿な会話を忘れ、走って教室へと向かう。
最初の授業は一対一で行う対戦形式の物で、ペアを組む必要があった。
なぜか俺だけは先生と組む事になってしまい、ひと悶着があったわけだが…。
無詠唱でファイヤアローを放っていたら、ずるいと皆に怒られてしまった。
流石にやり過ぎなのだろうか?
すると、至る所で『助けて、お話を聞いて』と声がする。
「分かった、お話を聞くから姿を見せてくれないかな?」
『龍王様じゃなくても、強い人なら助けて欲しいの』
眼前に現れたのは妖精とよばれる者だ。
皆一様に驚いている。
「エルフが何かあったの?」
俺はその妖精に向き合い話を聞く。
『多分魔王軍なの!』
「なっ! 分かった。 ドーラ様と、マーリン様にも声を掛け、すぐにエルフのところに向かう!」
「その必要はないぞい」
前方から四つの人影と共にとても聞き馴染みのある声がする。
「騎士メイカ、賢者マーリン様、賢者ガイル様、龍王ドーラ様をお連れしました。 このまま出立が可能です」
ガイル!? 魔法師ギルドのマスターの!? あの方も三賢者だったのか!
驚きが隠せず何も喋る事が出来ずに居るとガイル様が声を掛けてくれた。
「テイル少年。 そろそろ、我々も本気じゃぞ、と言うところを見せつけようではないか」
「はい!」
憧れの存在からの鼓舞に少し元気を取り戻し、俺は意識がクリアになる。
意識がクリアになると共に、忘れていたセバスの記憶をはっきりと思い出す。
「魔族に記憶を一部消されていたかもしれません。 マルディン家にも魔族が絡んでいました」
「そうか、ならばエルフの里の件が終わり次第、マルディン家を調査しよう」
マーリン様が仰ってくれた。 これで、きっと家族を救える。
そして俺達は準備を整えるべく、一旦街へ降りる事となった。