第七十三話 王女殿下
懐かしさに浸っていると。 サリィ王女殿下は語りだす。
俺は姿勢を正して聞く姿勢を取る。
「私は決して兄様や姉様達と比べて優れているとは思えません。 それに、容姿も悪いです。 貰い手なんていません…。 友達も居ません。 こんな醜い私と友達になってくれたのは妖精だけ」
「妖精が近くにいらっしゃるんですか!?」
「えぇ、おります。 感じ取るのが難しいだけなのです」
「でしたら、それを教えて頂くことはできませんか?」
予想外の返答に驚くサリィ王女殿下だったが、すぐに明るい表情になる。
そして、返答までに一瞬時間はあったもののおしえてくれることを確約してくれた。
「それとサリィ王女殿下にもう一つお願いがあるんですが、俺とお友達にもなってくれませんか?」
唐突の事で泣き出すサリィ王女殿下。
これが、『嬉しいから』なのは明白だが違ったら恥ずかしいので迫撃はかけれない。
とりあえずハンカチを渡す。 大事そうに握りしめてから、涙を拭う。
「ありがとうございます。 私なんかとお友達になってくださってありがとうございます」
「自分の事なんかって言うの、辞めないとだめですよ。 周りから舐められちゃう」
「わかりました、気を付けます。 ハンカチ、洗って返しますね」
笑って頷いて立ち上がる。 俺達しかいないので、俺は伸びをし帰り支度をする。
ドーラとマーリン様、メイカは先に門前まで行ってもらってるので、早く行ってあげないと拗ねてしまう。
「じゃあ、人を待たせてるし行こうか」
「はい! 畏まりました! テイル様!」
王城を歩いていたら、先ほどの主宰とすれ違う。
笑顔で会釈をし、向こうも笑顔で会釈をしてくれた。
「テイルさん、サリィ王女殿下の事を任せましたよ。 最悪は婚姻しちゃってください!」
「はい!? 任されはしましたが! えぇ!?」
笑顔で去って行った。 怖い。
「テイル様? 今主宰の方に何を言われたのですか?」
「頑張ってくれよって鼓舞されただけです! ちょっと特殊な言葉だったからびっくりしただけですよ!」
じと~っと視線が重くなってくる。 女性って鋭い。
そそくさと歩き出す。 しっかりと付いてきてくれる。
門前へと到着した。 皆が待っていてくれた。
皆一様にサリィに目が行く。
「テイル様…スケコマシ」
「テイル…もう違う女か。 良いご身分じゃの」
「流石は時代の勇者じゃな!ワシの弟子なだけあるわ」
と様々な言葉が来た。
「サリィ・エル・アストレアと申します。 以後テイル様の侍女を勤めさせて頂きます。 そして、テイル様のお友達になりました。 皆さまの思うような関係ではございません」
弁明してくれた。 良かった。
「ほう、天職は聖女か。 腐らせないように鍛えてやる。 我は龍王ドーラ。 そして、隣が三賢者のマーリン。 そして、その隣がテイル専属騎士のメイカ・フォン・ディッセルじゃ」
ドーラ様は鑑定を行った様だ。
「ご丁寧なご挨拶痛み入ります」
「お前さんほんとにあの国王の子か?」
マーリン様が言っちゃいけないことを言っちゃう。
これには皆苦笑いだ。 俺だけは真顔だぞ。
「はいそうです。 父は子を皆平等に接してくれます。 ですので、私は幸せを感じておりました。 ただ、友達も出来ず、家族間でも浮いてしまう私をずっと父は憂いていて、此度、テイル様の侍女にしていただけたのです。」
「それはなんとも…」
「皆、サリィ王女殿下の友達になりませんか? 第二の家族の様な関係になるんです!」
「いいのうそれ」
俺達は、馬車に乗らず歩きながら公爵邸へ帰った。