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第七十一話 勇者再誕

錬金術で再現した打ち上げ花火。 これは、ファイヤーボールの中に火薬を仕込み、炎色反応により色を変えているのだ。

高校時代に先生が化学の授業で雑談をしていた時に軽く教えてくれたのが頭に残っていたらしい。


「綺麗…」


「これが、錬金術!?」


「本当に詠唱が無かった…」


など反応は様々だ。 これで良い。

掴みさえきっちりできればそれで良いんだ。


「皆さんには色々覚えて貰います。 無論! 危険もあるかもしれません。 ですが、危険は嫌だという方には比較的安全な事をしてもらいます。 魔道具の量産や、弓などの錬成、望むのならば先ほどの花火の様な人々の娯楽も教えましょう」


耳の少し長い男が話しかけて来る。


「俺の様な半亜人(ハーフ)でも教えてくれるのか? 君は恐れないか?」


「人族以外の種族を(さげす)む事はこの国の法で禁止されています。 半分混ざっているから怖い? 僕は(・・)その様な差別的な思考は僕には出来ません」


「わかった。 俺は命を賭けてでも錬金術を極めたい! そして、もう不遇なんて言われたくない!」


私も! 俺も!と皆一様に声を上げる。

国王陛下もこの様子を見て驚いている。


「ではまず、皆さんに授業を受けてもらう必要があります。 それは基礎も基礎かもしれないし、この国の常識を(くつがえ)す事になるかもしれません」


「それはどういうことですか?」


若い眼鏡をかけた明らかに研究者っぽい女性が代表して述べた。


「それに関しましては陛下からお許しが出るまでお話しすることは出来ませんが、損得で言えば必ず得になると保証しましょう」


「わかりました、信じます」


「最初に授業を行うのはクリスエル公爵邸でと思っているのですが、皆さん大丈夫ですか?」


「命を賭けると言ってしまった手前分かりましたとしか言えないですよ」


男が苦笑いをし、皆釣られて笑い出す。

良い光景だ、きっとこの不遇な生産職全ての職に良いところがあるんだと思う。


「では、早速ですが明日の陽が昇り切った頃に公爵邸に来てください」


「はい!」


皆声を揃えて返事をする。


「ふむ、そろそろ良いか?」


「陛下!? 何か私やってしまいましたでしょうか?」


「違う、そうではない。 ワシの権限でこの場に居る者にのみ公表する。 勇者クロキは役目を終え、元の世界に帰られた。 ここに居るテイルにワシは勇者の称号を授けることとする! 勇者と言うのは天職の事ではなく、国から...与えられる称号の事なのだ! 我が国民には必ず全て話そう」


「な!? クロキ様が居ないなんてどうやって魔族の、魔王の脅威から身を守れば…」


「そこで、次代の勇者テイルである。 この者はなんの制約もなく力も、知識も使える。 力を使いこなせばクロキより強いのかもしれん。 安心してほしい」


皆一応胸を撫でおろす。 が、まだ完全に安心した訳ではない。

不安はすぐには拭えないのだ。


「ふむ、勇者テイルよ、この者達を導け。 そして、魔王が復活した暁にはそれを凌駕する力で打ち倒し、必ず王都に凱旋(がいせん)する事を王命とす(・・・・)!」


「はっ! その命、確かに(たまわ)りました」


皆が引き締まりだす。 責任感と緊張感が勝ち始めた様だ。

後は俺が背中を押すだけ。 ずっと黙って傍に居てもらったドーラ様がそれを察し声を上げる。


「我が名は龍王ドーラである。 しかとこの者の声を聞け!」


「錬金術師の諸君。 僕は皆が聞いていたように新たに勇者に任命され、命を受けた。 その命を果たすべく君達には僕の右腕となって欲しい。 僕に…()に続け!」


おおおおおおおお

たった数名。 たった数名で、城が揺れた。


これが俺のいや、『俺達』錬金術師の第一歩だ。




――――――――第二章 錬金術師の再臨編 完――――――――


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