第六十一話 セバスの悪事
目が覚めた俺はドーラ様に謝られてしまった。
「すまないテイル。 あそこまでやるつもりはなかったんじゃ」
「しかたないよ、俺も拙い部分は沢山あったし」
「そうなのかの。 してあれは、なんなのじゃ? 殺意も敵意も無しにあの破壊力、殺傷能力、魔族にぶつけようもんなら粉々じゃと思うぞ」
俺は驚きが隠せないでいた。
「えぇっ!?」
「えぇっ!? じゃないわい! テイル! いつの間にあんな強力なもん覚えたんじゃ?」
「…夢で」
「夢?」
「はい、前世の夢を見ました。 俺の記憶。 忘れていた記憶を」
見たことをすべて話す。 ドーラ様には話しても良い。 大丈夫だと信じているから。
「…そうか」
返ってきたのは短い言葉。
その言葉に全てがなんだか詰まっているようで、なんだか少し嬉しかった。
「ドーラ様にしかまだ話していないのでメイカや、マーリン様には心の準備が出来たら話すかもしれません」
「そうか、その時が来たら話すと良い」
「はい!」
俺はまだ、降りかかる脅威に気付いてなど居なかった。
いや、見て見ぬふりをしていたのかもしれない。
俺は帰宅し、自室へと向かう。
するとセバスが俺の部屋の中心に立っていた。
「おやおや、テイルお坊ちゃま、やっとお戻りですか。 早く貴方を消す必要があるのでお待ちしていましたよ」
「どういうことだセバス?」
俺は訳が分からなかった。
否、訳が分かりたくなかった。
「こういう事ですよ」
黒い魔法陣がセバスの足元に現れる。 これは、魔力の封印の呪術だ。
これを己に課していたのだ。
見たことのあるような黒い翼が生える。 そして腕が剣の様に鋭くなる。
「さぁ、我が名は魔王軍幹部ミハユル。 貴方を殺す者です。 さぁ、剣を抜きなさい」
俺は疾風のように駆け斬りつける。
「シッ!」
「遅い!」
ガン! ギン! と打ち合う!
それはとても激しい打ち合い。
物音に惹かれた侍女達は悲鳴を上げ、父上と兄上は下卑た笑みを浮かべている。
母上は、心が抜かれた人形の様になっているのがチラリと見えた。
俺は、縮地と瞬閃をし、斬りつける。
盛大に避けられてしまう。
俺は剣をを上段に構え足を踏みしめ、魔力を貯める。
実戦で使うのは初だし、何なら応用版だ。
「貴方、隙だらけですよ!!!」
鋭爪が眼前に迫る。
しかし、それは届くことは無かった。
「月影 改!」
セバス…もといミハユルは真っ二つになり、灰となって消えて散ったのだった。