第四十五話 アリサ
俺は主席合格をしたため早く帰ることができ、一旦家に帰ることとなった。
迎えは無く、トボトボと帰路につく。 なにやってんだろうなぁと。
父上に主席合格はもうバレてそうなので誤魔化せないと思うので、ここは必死になって取り繕うのが先決だろうか?取り入った方が良いだろうか?分からないな。
まだ考察段階だが自動車や、無線機なども開発の視野に入れて行った方が良いかなと思っている所だ。
将来的なベーシックインカム万歳だ。 革命万歳だ。
娯楽も少ないので競馬などもやってみてもいいかも良いかも知れない。
馬多いし。
そうこうしていると、家の前に着く。 満を持して家へと入る、
アリサ、ルルファ、セバスが出迎えてくれる。
するとルルファに声を掛けられる
「間もなくお食事の時間です! 皆さまもうお揃いですのでお急ぎください!」
「もうそんな時間か! ありがとう!」
比較的正装で行ったのでそのまま食卓に向かい席に着く。
すると、父が声を上げる。
「テイル、貴様、主席を取ったそうだな。 学科だけでなく、実技まで、しかも上級オーガとやりあったのも事実ときたではないか! どういうことか説明しろ!」
「そ、それは…」
言葉の圧に言いよどんでしまう、良い言い訳も思い付かない。 どうするべきか必死に考える、すると、
「お言葉ですが旦那様、テイルお坊ちゃまは人一倍努力をされていました。 私はテイルお坊ちゃまに付いてお傍で見ておりました。 それは書物庫で書物を読み漁り、必死に勉強をなさっているお姿、メーティル様にご師事なさって魔法の勉学に努め、高い魔力を誇示することなく必死に磨いているお姿もありました。 また剣技においてもメイカ様方騎士達に付いて剣を振るい、冒険者として魔物を討伐したりもしていました。 きっとそこに大きな糧があったのだと私は思います」
「ふむ、アリサ、貴様がそこまで言うか。 庇い立てするのに私情は挟んではおるまいな?」
「はい、客観的に見ているつもりです。 それでも私の言葉は聞き入れてはくれませんでしょうか?」
「ふむ、セバスよ、どう思う?」
セバスが誰にも見えない様に笑みを浮かべこう答える
「私は彼女の意見は至極真っ当に感じました。 しかし、なればこそ、テイルお坊ちゃまが強くなられた理由を知りたい所ではありますな」
この質問であれば回答に困らない。
「えぇ、錬金術師は不遇です、ましてや廃嫡される身、ですので誰よりも強く、誰よりも生き抜く術を持たないといけないと思ったのです。 それだけでは不十分ですか?」
「ふむ、納得は致しました。 決して如何わしい理由があっての事ではないのですね」
「如何わしい…とは?」
急にセバスは下卑た表情になる。
「世界を征服するとかですかね」
「そのような事思うはずが、ありませんよ」
「そうですか、残念です」
残念です? どういうことだ?
「まぁよい。 テイルのことは分かった。 しかし、廃嫡の事、変えるつもりはない、少しの功績で良い気になる事は無いように」
「わかっております」
気付けばセバスはいつも通りニコニコとしている。
さっきまでの下卑た表情とかは一体なんだったのだろうか? 見間違いだろうか?
母上も兄上も黙って聞いており、何も反応を示してくれる様子はない。 最近は心の無い人形の様な状態だ。
何故アリサは俺を庇ってくれたのだろうか? それが気がかりになりながらも俺は募る不安感を抑えつつ学院の為に床に入るのだった。