第四十三話 悪魔に操られた男
「おい! そこのお前、良い剣を持っているな。 俺に寄越せ」
とうとう絡まれてしまった! しかもめんどくさい!
「いえ、それはちょっと出来ないです。 俺が自腹で買った物ですし」
至極真っ当返しをしておく、だってあの時手持ちのぎりぎりで買った掘り出し物の良い剣だし。
「剣聖に逆らうっていうのか? Sランクなんだぞ?」
何を言ってるのだろうか? ランクが高ければ何をしてもかまわないという倫理感はかなりおかしい。
「もうしわけありませんが…」
「なら殺して奪ってやる!」
剣聖が抜刀する。 俺も慌てて抜刀し受け流す
「チッ ちょこざいな」
「ギルド内での刀傷事は禁止ですよ! 剣を収めてください!」
「うるさい! 剣聖に逆らうってことはそういうことなんだよ!」
どういうことだよ。
「テイルよ。 そやつは悪魔に魂を操られておるかもしれん。 解呪してみるのですこし粘ってほしい」
「んな無茶な…。 腐っても剣聖だぞ…」
やるしかないか。 俺は必至で受け流す。
ドーラの解呪の詠唱が終わるまで時間稼ぎだ。
一撃一撃が重い。
しかし身体の調子が良いのか苦戦を強いられている感じはしない。
なんなら逆に押せそうだ。
ガキン! ガキン! 一合一合打ち合う音がする、辺りは騒然としているが高レベルな戦いに誰もが手を出せずにいた。
しかし、急に剣聖が苦しむようなそぶりを見せる。
俺は一瞬の隙を付いて俺は剣聖の武器に対してウェポンブレイクをする。
久々に使用したので拙いところがあったかもしれないが上手くいった。
武器を破壊することに成功したのだ。
「く! 僕は...俺は...私は...剣聖なんだ!」
「テイル! 魔法陣の構築が終わった! そいつを押さえろ!」
俺は言われるがまま縮地で剣聖の後ろに回り込み羽交い絞めにする。
「グッ! やめろ!」 物凄い力で抵抗してくる。
だがもう遅い。
「純高なる光よ、すべての魔を払え! ピュリフィケーション!」
「う、ぐ、あああああああああ!」
大丈夫なのだろうか…?
生きているのは確かだがとても苦しそうにしている。
「僕は一体何を…」
落ち着いたのか言葉を発す剣聖。
ドーラが事の顛末を話す。
「剣聖の僕が悪魔如きに後れを取ったなど不覚…。 腹を括って自首をするよ。 迷惑を掛けたね」
と言って去ってしまった。
悪魔族の魔の手は意外と身近にあるのかもしれない。
そう、身近なところに...。