第三百七十八話(回想)
“私達を鍛えて下さい!”
そう言われて俺は困惑していた。
学院や賢者、大罪達との交流で大分強くなっていた彼女達だったからこれ以上強くする必要も無いだろうとも思っていた。
「私は、私達は足手まといにはなりたくありません!」
マキナを初めとし、皆の強い意志を感じる。
「俺だけだと知識や戦術が偏るから、三賢者や元大罪達も含めて合同で訓練を行うって形なら認めようか。 俺も少しなまってたのは事実だからね」
その言葉で顔に光が灯された様になっている一同。
隠れているマーリン様はそそのかした張本人なのだろうか?
だとしても隠れて見ているのはどうかと思う。
今後遠出する機会も増えるだろうし、新たな試みも試さなければな。
「まず、皆には商会や領地の運営も任せて行けるように沢山覚えて貰わなきゃいけないことがある。 その辺りはある程度ナールムが分かってると思うけど…」
「もちろん」
「はは…。 だよね…。 じゃあそれはそれとして、戦闘面に関しては魔法を主力として戦うからといって、近寄られた時の対処が出来なければただの砲台となんら変わらない。 だから近接をまずは重点的に特訓していく」
「で、では私達、騎士はどうしたら…?」
「なにを言ってるか分からないけど、もちろん、魔力操作を同時並行でやるにきまってるでしょう?」
大罪達はゲラゲラと笑い、三賢者はもはや呆れかえっていた。
何かおかしい事をしているだろうか。
ここからうちの嫁達には地獄の特訓と呼ばれ、俺は少しの間だけメイカとナナ以外に鬼教官と呼ばれていた。
まっこと遺憾である。
「おいおい! そんなんじゃ詰められたら死ぬぜ!? テイルなら切り返せるのにてめぇらは一秒すら相手にならねぇのか?」
「くっ!!!」
「やめろ、マックス。 王妃様達は護られるべき対象だ。 ぞんざいに扱うな」
「おいおい、騎士団長サマよぉ。 さっきのテイルの言葉聞いて無かったのか? 常にこいつらを誰かが護れるとは限らねぇんだ。 だったらいつまでも甘くしてられねぇだろうが」
「一理ある…が」
団長はこちらを見る。
そして、ニア達はニヤニヤとこちらに視線をやっているだけ。
俺の発言次第で何かアクションを起こすつもりなのだろう。
「分かった。 団長。 俺がもし死ぬかもしれないことも想定して訓練をしてくれ」
「御意」
「はは! じゃあ、ボクたちも参戦っと!」
その日から数日の間にうちの嫁達は大罪を倒すまではいかずとも、善戦するようになり、三賢者に並び立つ国家戦力となってしまった。
聖女と鍛冶師が俺とそこそこ剣で打ち合えるってもうおかしすぎるだろ…。
国や領地なんかは全然まかせても問題ないだろうね。
久々の更新です。
体調不良で他の作品の更新もままならず...。
今月の中旬からはコンスタントに更新出来るように頑張りたい所存。




