第三十七話 ゴブリンメイジ
僕はとりあえず掲示板に残っていたゴブリンの五体討伐クエストを受けることにした。
「本日は緊急事態の為クエスト失敗によるペナルティはありません。 また、報酬は通常時より割高となっています。 銅貨七枚が成功報酬、通例通り追加の討伐部位の納入で追加報酬があります」
と今回は口頭でもしっかり説明があった。 緊急事態の為だろうか。
ゴブリンは相当簡単な部類だし、報酬もあまり良くないからあまり人気がないんだよね。
それが銅貨七枚なら流石に受けても良いかもしれない。
メイカもそれでいいとのことなのでそれにしておく。
「今森の奥は危険ですの森の入り口付近のみでお願いします。 Sランク冒険者が手も足も出ないドラゴンが出たそうなので」
「わかったよ、流石に命が大事だからね」
そんな会話をし僕たちはいつも通り森へと向かう。
またキラーラビットを見つけたので「風の刃よ、切り裂け」と素早く詠唱しエアカッターで仕留める。
これは追加でギルドに買い取ってもらう事にする。
血抜きだけして自家製のマジックバッグに入れておく。
合計二羽なので結構良い収入になりそうだ。
僕はとりあえずいつもの様にサーチの魔法を使う。
奥には入るなとのことなので手前に居る手ごろな群れを狙う。
詠唱しながら近づき、射程ギリギリでエアカッターを行使する。
スパンッと首を撥ねる。
首が地面に落ちたことで周りのゴブリン達は戦闘態勢に入るが僕は既に次の魔法を詠唱に入っている。
しかし、不規則な動きに翻弄されてしまい詠唱は一旦中断してしまう事となる。
剣を抜き、縮地を用いて相手の間合いに移動してまずは一体を切り込む。
次に反応してきたゴブリンに対して、
「氷の矢よ、かの者を貫け」
素早く詠唱したアイスアローを穿つ。
クリーンヒット! アイスアローは綺麗に額に突き刺さる。
これで見えている三体は倒した。
だがまだ反応はある。
どこだ?
そう思っているとファイアボールらしき魔法が向こうから飛んできたので慌てて避ける。
「あれはゴブリンメイジです! すぐ撤退しましょう!」
メイカが撤退と叫ぶ。
しかし、あの程度なら僕であれば倒せそうなので様子を伺う。
何故か僕の前で長ったらしい詠唱を始めたようだ。
何を言っているのかは全く分からないが、知能が低い為に詠唱している間は集中するために完全に止まっている。
そうなると完全にただの的なので縮地で近づき首を一閃し、討伐を終えた。
ゴブリンの右耳と魔石を抜き、ゴブリンメイジの杖を持っていく。
すると「グガアアアア!」と耳をつんざくような咆哮が聞こえる。
視界が暗くなり、辺りを見回す。
すると眼前に現れたのは木々をも凌駕するほど透き通るように白い巨大な龍であった。