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第三百六十七話

なんだかんだ言いながらも皆は目配せ一つで俺と交代してくれる。

ちゃんと信頼してくれているじゃないか。

しかし、蛇の血縁とは言え毒でこの様な姿にされてしまったのは言葉にしがたい感情が込み上げてくる。

ギロリと睨みつけて来るスキュラ。

その眼差しには様々な負の感情が籠っている様に見受けられる。 それだけではない。

“助けを求める様にもみえている” のだ。


これはきっと俺の勘違いなんかではないはずだ。


「陛下!!! 危ない!!!」


複数の犬の顔が俺の身体を貪ろうとする。

しまったな…。 その攻撃に殺気が無くて油断した。

間合いに完全に入り込まれてしまった。


「子犬とのじゃれ合いってあまりした事がないんだよな」


「「「「「「グルルルルルル!!!」」」」」」


マジックバッグから取り出した大量の骨と干し肉。

スキュラから生えたその犬頭は本能に抗える訳も無く。

…しかし人を襲う様な強靭な身体の為か骨も干し肉も一瞬で消えてしまう。


「顎の力どうなってんだよ…」


耐えきれなくなり再び襲い来る犬頭達。

これ、オロチの方が可愛げがあったな…。 シラフの時に限るけど。


「シッ!!!」


聖刀が手にしっくり来る。

だが…!


「毎回毎回数多いな! 俺も腕沢山欲しくなってくるぞ!」


「陛下―! それはもうバケモノなのじゃー!」


「獣人でも多分居ないぞー!」


「ゴーレムにでもなるのでしょうか…」


「「「「「もう、何があっても驚きませんよ…」」」」」


茶々を入れて来るな!

と言うか近くに居るなら加勢してくれないの!?

いや、下手に加勢をしてしまうとこれ、喰われるか。


にしても強い。

複数の標的を相手にする場合やはり槍が欲しくなる。

まぁ、槍は剣や刀ほどうまく扱えないのでこのレベルの戦闘になると役には…。

それに、傷つけ過ぎてはいけないという制限付きだからな。 加減の分からない槍など使ってしまっては危険すぎる。


「皆はセイレーンを足止めしてくれ!」


俺は皆に声を掛け、外から妨害が入らない様にだけしておく。

すると皆はすぐさま動く。

“出来るだけ” 殺したくはないので麻痺毒などの矢を鳥人族にあらかじめ渡しておいたりしたし、ヴァンパイア達は拘束系の魔法が使えるので多少の戦闘のみで無力化も容易だろう。

問題は海女帝だが…。 まだ動きが無い。

早くこちらへ来いと言わんばかりに待っている様だ。


迫り来る犬頭に対し俺は月影一心流剣技の竜巻を行った。

これは本来対人戦闘で武器を弾き飛ばす為に使用するためのものなのだが、流用は可能だ。

それだけで大きな隙を作る事が出来た。


スキュラの犬頭の半数以上を同時に巻き上げた事によりかなり無防備になったのだ。


一気に距離を詰め、聖刀の柄の部分でぶん殴る!!!

スキュラはその場に沈みこみ、頭を抱えこんでしまった。


「テイル君、薬が出来たんだけど…凄いモノを見てしまった。 サディスティックテイルだ…」


「それを言うならドメスティックテイルではないかな?」


とりあえず不名誉なあだ名を付けるのをやめて頂いても宜しいでしょうか。


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