第三百六十五話
とりあえず皆で船に乗り込み、沖に出る。
海蛇王の話が本当なら方向はこちらで間違いないだろう。
潮の流れと、一番波風の酷い海域にある島。
そこに海女帝が潜んでいるのだろうと。
『テイル、多分だが何者かがこちらを見張っているぞ』
元の姿に戻り船の周囲を警戒しながら同行してくれている海蛇王からそう伝えられる。
多分この気配であればセイレーン。
一応、ヴァンパイア達に頼んで全員の魅了耐性を上げてもらっているから対策はばっちりだ。
「あぁ、いつ攻め込まれても一応大丈夫だけど。 何が起こるかは分からないから注意しておいてくれ」
『奴らの縄張りまでは遠いはずなのだが…。 何故だ』
「それに関しては分からないね」
そうしているとセイレーンの気配が遠ざかっていくのが分かる。
単なる偵察だろうか。 島に近付けたくないということだろうか。
なにかがあると言うのだろうか?
(テイル殿、地球以外の世界から干渉を受ける予兆があった。 朕らで対処しているが、何が起こるか分からない…十分に留意して欲しい)
タイミングが悪すぎる! いや、寧ろ相手にとって都合がよすぎる。
「団長、流石に今回も面倒な事になるかも知れないよ」
「主様、それはいつもの事でしょう。 しかし、迫り来る火の粉は…」
「打ち払わないといけないね」
「いや、喰らい尽くせよ」
いや、それはお前だけだよマックス。
「テイル君、あの禍々しい気配は?」
「海女帝のモノだろうね」
「おかしい、私達勇者パーティが一度戦った時はあんな醜い気配では…」
まるで負の感情を凝縮しました! みたいな魔素と魔力を放出している。
威圧感が凄いな。
「もしかして、神の加護…?」
(まさか!?)
「テイル君? どういう事!?」
「んー。 確証が無いんだよ。 だから直接見てみないと分からないね」
うぅむ。 他の世界の介入?
だとしたら何のために?
考えても仕方がないか。
「ところでテイル、その石はなんだ?」
「良くぞ聞いてくれました!」
「はい?」
「錬金術で色々石を混ぜてみたんだけどさ」
「お、おう」
「テイル君の悪い癖が出たよ」
悪い癖って…。
「錬金術でフロストコバルトっていう特殊な鉱石とアダマンタイトを混ぜた物なんだ。 氷属性の魔力の通りが異常に良くてね…。 ちょっとした実験に使おうと思っているところさ」
「ちょっとした実験?」
「ま、あとでじっくり見学出来るさ」
俺は凄く悪い顔をしていると思う。




