第三百六十三話
月影の刀術を飲み込む速度は前世では確かに誰よりも速かったと言える。
しかし、結局のところは月影一心流の半分は実際には使えない刀術。
なぜなら現実の身体が追いつかないからだ。
だが、この世界だったらそれが出来てしまう。 何という事だろう。
だが、一つだけ欠点がある。 居合や月影一心流の様な技を使う刀術は日本人の身体に向いている為、今の身体では最大限のパフォーマンスが発揮できないということだ。
年齢にしては身長も高い為に腕や足も長いからね。
まぁ、それはさておき…。
「おい、テイルどうした? お前ならすぐにでも行くって言いそうなのによ」
「あぁ、行くには行くんだけどさ。 戦闘は避けられないし。 多分魔法が効かない相手だから苦戦すると思ってね。 あぁ、それと…もしかして良い収穫があるかもしれないよ」
「「どういうことだ?」」
「行けば分かる」
「全くよォ。 これだからテイルと居ると飽きねぇ。 てか、あの馬鹿達どこ行った?」
「一緒じゃ無いの? あ、いや多分獣人達と一緒に何かやってるな…。 物音が聞こえる。 これは…。 ハハッ! あいつら馬鹿だ!」
「「なにが?」」
俺と海蛇王は何が何か分からずに困惑する。
「あいつら、力比べする為にデケェ岩をぶっ壊して回ってんだよ。 多分だけどな。 じゃなきゃこんな音ならねぇよ」
「なぁ、テイルよ…。 お前の友と言うのは皆、脳の中身が筋肉で出来ているのか?」
「奇遇だね…今、俺も同じことを考えていたところだよ」
「ちょっと待ってろ。 あの馬鹿共呼んでくるわ。 お前ら何度も説明してたら面倒だろうから説明が最小限に済むくらいには移動中にこっちで済ませとくぜ」
「意外と頼もしい」
「うるせぇ、人族の中で隠れて冒険者やってた時期が長いからこういうの慣れてんだよ!」
流石だね。 ん? ところで、この力比べってやつ…剣聖達もやってるの? 随分と剣聖達の気配が近いけど。
あの元大罪、獣王、始祖、蛇達相手に? 根性が凄いよ、本当に。
「海蛇【王】 王の名を冠する海の生物」
「ん? テイル? 何が言いたい?」
「過去に目にした伝承にあったんだ。 【海女帝】 風も波も強い、そんな程度で海蛇王と言われるリヴァイアサンが近付くのを嫌がる程とは思えない」
「あそこの異常な波風は異常だ。 よもや奴の仕業だったとは…。 引きこもってないでちゃんと管理してれば…。 奴が生き残っているとは」
「いや、それは仕方ない。 まぁ、今回は邪魔だから排除させてもらうけど」
まぁ、多分実際問題それだけではないとは睨んでいるけど。
この目で確認するまでは何とも言えない。
もしもの場合は留守番してる子達の出番もありそうだ。
理由はアレだ。




