第三百五十九話
「「「海蛇王と顔見知りになったぁ!?」」」
「テイルの事だから今更俺達は驚かねぇよ…なぁ…?」
「う、うむ…」
団長のその顔には冷や汗が滴っており、どことなく震えている様にも見える。
リアは完全に固まってしまっている様に見える。 これは大丈夫なのだろうか。
失神している?
「はぁ…。 これは大物の名前だねぇ。 当時、勇者パーティはリヴァイアサン討伐の大規模な作戦に強制的に参加させられてね。 あの時の惨い光景は今でも覚えている。 その作戦で多くの者達が死んでいったからね。 勇者パーティの近くに居た旧王国の騎士団…すなわち、今は団長かな? アレの部下達も半数は死んだよ」
えぇ…。 流石にそれは…。
「当時の獣王達や始祖達も参加していたのじゃ。 バーン、確かそうじゃろ?」
「あぁ、俺は生まれて無いから詳しくは無いが多くの死傷者が出たと聞いている。 そのお陰で殆どのリヴァイアサンは討ち取る事が出来たがただ一頭だけ別格なのが生き残ったとか…」
「海に王の名を冠する生物は確認されているのは奴だけなのじゃ」
「人魚族に姫を冠する奴は居たはずだ」
「だけど私達勇者パーティが海に出たのは何年前だと思っているんだい?」
「む、言われてみれば…」
『盛り上がってるところ悪いが、さっきの話は海蛇王の前ではしないでやってくれ。 あの件以降かなりふさぎ込んでしまってな。 第三者であるこちらからすれば誰も襲っていないリヴァイアサン達を襲ったヒトガタ達に非がある様にしか思えなかったし、それで同族を皆殺しにされた奴の気持ちを考えたらいたたまれないのだ』
「それもそうだ。 オロチよ、昔の事とはいえ貴殿の友人を殺めた事を謝罪したい。 元勇者としてなんといえばいいか…」
『過ぎた事だから仕方ないだろう。 それに奴だってそこまでやわではない。 それと、一つ訂正しておこう【憤怒】 よ。 このヤマタノオロチはあの海蛇王とは友人などと言うモノではない。 勘違いするな』
「では、番か?」
オロチから徐々に殺気が溢れ出て来る。
『貴様、殺すぞ…』
「す、すまない。 冗談だ…」
「「ははは!」」
「主様、マックス…?」
ひぃっ!? 剣に手を掛けてる!?
俺まで教育する必要はないのですよ???
『すまん…機嫌を戻せ…』
「そ、そうだって…俺の肉やるからよ…」
いや、多分そういう事じゃないと思うけど。




