第三十五話 父とセバス
食事も終わり帰宅することにした僕達。
家に帰るなりルルファとアリサが出迎えてくれた。
「「おかえりなさいませ」」
「ただいま。 今日は食事してきたから要らないよ」
もうお腹一杯だしね。
「かしこまりました。 旦那様がお呼びになられていたので書斎までお越しください」
なんか嫌な予感しかしないなぁ。 父上の様子も選定の儀からおかしいし。
「わかった。 ありがとう」
とりあえず、言われるがままに書斎に向かった。
扉をノックする。
「父上、テイルです。 只今帰りました」
「うむ、入れ」
僕は扉を開け中に入る。
すると父上とセバスがそこに居た。
「まずは入学試験ご苦労だった」
「ありがとうございます」
そして父が重い口を開く。
「こんな噂が立っていてな。 何しろお前が統率種のオーガと互角にやりあった。 だの、冒険者ランクが跳ね上がっただの」
「それに関しまして前者は誰かの見間違いかと思います。 後者はギルドマスターに認められ飛び級をすることになりました」
「ふむ。 そうかそれだけの確認だったのだ。 お前程度でも倒せるのだから最近の魔物は質が低いのだろうな...。 冒険者もランクが上がったのだ、何度も言う様だが我が家の名を汚す様な真似だけは決してするなよ」
確認をしてきたい様だ。 きっと何かあるのだろう。
そして、釘も刺してきている。
「父上の全盛期の頃はまだ魔王が生きていた時代だったので魔物の脅威もすさまじかったのだと思います。 今は魔王が居ないので魔物の質も下がっているのかと思います。 家の名は決して汚す事は無いと誓います」
「そうか。 平和な時代に生まれて良かったな。 帝国にでも生まれれば少しは逞しく育ったかもしれんか。 話は以上だ」
「はい、では、失礼します」
僕はそのまま部屋を後にする。
ガチャリと扉が閉まる。
「セバスよ、やはり...その報告は間違いではないのか?」
「いえ、正確な出所からの情報です。 確実に奴はオーガの統率種とやりあっています」
「だが、テイル自身は負けたのだな? ならばそれ以上は何も言うまい。 ...厄介ではあるが」
「はい。 仰る通りかと...。 厄介な存在である事は代わりはありません」
アレクは下卑た笑みを浮かべながら、
「しかしサイドを跡取りにする計画は順調だ。 これで我々の戦力も上がる」
我々とは誰なのだろうか?
「戦力を上げたいのは分かるのですが、何故ミサ様を引きずり下ろしたいのですか?」
セバスが思ったことを口にする。
「奴は器にはそぐわないのでそろそろ潮時だ。 後は何も知らないルルファを後に正式な正妻にすればすべて事が済む話なのだ。 まぁ、難点は侍女風情を正妻に組み込む事になる事だがな」
「サイドお坊ちゃまを利用し、我々の手駒にする...と」
アレクはミサをどうするつもりなのか、セバスには伝わって居るようだった。
この会話はテイルもサイドも、もちろんミサですらも知らないのだった。