第三百五十六話
「これは良いな。 人化した姿だとこのスルメとやらも大きさが程よくて何とも言えないじゃないか！」
『おい、ずるいぞ。 お前だけ人化出来るなど…』
「八本首の人族なんて見たくないのじゃ」
あれ、酒の席は無礼講なのか？ 虹蛇ってこの蛇の国では割とカースト的には下の方って聞いてた気がしたけど…。
いや、まぁ仲が良いのならそれは良い事なのだが。
『我が友よ、不思議そうな顔をしているな。 顔に出ているぞ』
あぁ、オロチには分かったのか。
『概ね虹蛇の奴から…と言うよりもあそこに居るやつらからは大抵オロチが虹蛇達を追いやったみたいな話でも聞いたのだろう？』
「良く分かったね」
『そんな事だろうなと思ったさ。 簡単な話だ。 食料難なんだよ。 さっきも見ただろう？ 力量差の分からない馬鹿な虫か、幻惑に掛かる間抜けな獣しかあの一帯にはもう来ない。 虹蛇を慕う者達までは食わせられないさ』
「そんな話聞いていないのじゃ！！！」
『今言ったからな』
あぁ、別に本心から仲が悪いとかじゃないのね。
「相変わらず不器用だな、オロチは」
『お前は相変わらず引きこもりだな』
「煩い。 お前の酒を私の眷属に全部渡してしまうぞ」
『すまん。 それはやめてくれ。 と言うか眷属居たのか…？』
「ふふ…。 聞いて驚け？ ウミヘビとタツノオトシゴだ！」
それは蛇か？ 蛇なのか？？？
『なぁ、頼むからちゃんと蛇を仲間にしてくれ…』
「そうじゃ…あの海の王とも言われた海蛇王【リヴァイアサン】 がそんな者を眷属にしているなど…」
「ほれ、あっちを見てみろ」
ウミヘビとタツノオトシゴの群れがこちらを見ている。
それも凄く悲しそうな顔で。
『わ、悪かった！ お前達も立派な蛇だ！ 良く見たら凛々しいではないか…！』
「そ、そうじゃ！ す、すごいのじゃ！ なぜか分からんけどすごいのじゃ！」
フォローが必死過ぎるだろ。
余談だがウミヘビは一応蛇が進化した姿であるため、基本的には爬虫類なのだが、中にはソックリな生物が存在している。
ちなみにそれは魚類だ。
紛らわしいこと…。
また、食材としても有能な…などと考えていたらウミヘビ達が震え始めたのでこの辺にしておこう。
「酒とやらは美味いが身体が火照る感覚が慣れないな…」
「それを酔うって言うんです。 一気に飲み過ぎると気持ち悪くなるから気を付けてくださいね」
『なんで先に言ってくれなかった…？』
「オロチは最悪討伐も視野に入れてたし、酔っぱらってても良いかなって」
『「「酷いっ！！！」」』
息ぴったりじゃないか！！！ なんならオロチは首が多いせいでエコーが凄いんだが？ 合唱コンクールかよ。
