第三百五十三話
「ぐぬぬ、皆テイル! テイル! って…主神の威厳という物がだな…」
部屋で一人呟くアレスディアは気付く、自分も何か考えれば良いのだ! と。
実に頭の悪い神である。 魔神王に関しても生まれたのは主神のせいと言っても過言ではない。
それに気付いている龍神王だけは主神の事を厄神だと思っているのはここだけの話だ。
無論、アレスディア本人はそんな事一切知らない。 今後も知る事は無いだろう。
「ははは、テイルに出来るのなら料理の一つや二つくらい主神であるこのアレスディアに出来ないはずは無い!!!」
そう言って出来たのはダークマター。
この世の混沌である。
「おい、なんだこれは。 流石にこれを料理と言って食わそうとしているのなら怒るぞ…主神アレスディア」
「創造神イナスよ、流石に食べてみない事にはわからないじゃないか…? そ、そう思うだろう?」
「なぁ? こちらは創造を司っている神だぞ? これが劇物であることくらい見れば分かるわ!!!」
「うぅ…主神としての威厳が…」
「今更そんな事を気にしていたのか…」
今更と言う言葉にビクリと身体を振るわせるアレスディア。
この世界の名前の由来にもなった主神として教国のみにならず、世界中で崇められているはずなのに、と。
「アレスディアよ。 天職のバランス調整の失敗、更には、それを後先考えずに我らが愛し子達に勝手に渡して…そのせいでどれだけの人が苦しんだと!!!」
「まぁ、良いじゃないか。 今はテイル殿が居る。 主神アレスディアにはこれから馬車馬の様に働いてもらおう」
龍神王の救いの手によって助かった様に見えて地獄に落とされるアレスディア。
「働く…?」
「テイル殿が天界に来る際に食材が無いと朕らに料理が作れないでしょう?」
「確かにそうだ」
「だから…下界で、その材料をちまちま集めて戻って来て頂きたい」
「なぁ、イナスよ。 龍神王が歴千の強者である【強欲】 のオーガにすら見えてきた…」
「何を言うか、カッコイイ龍…いや、食いしん坊か」
「人を【暴食】 の様に言うな! 朕は選ばれし最高の龍であるぞ!」
「「人じゃないだろ!!!」」
総ツッコミである。
今日も神々は平和であった。
そして、下界では…。
「ぶぇぇぇぇっくしょぉぉぉん!!!」
「え? どうしたマックス、風邪でもひいた? 変な物食べ,,,いつもの事か」
「うるせぇ! どうせ誰かが噂でもしてんだろ? 昔からたまになるんだよ」
「そうだね、僕達も思ったけど毎年くしゃみをする期間があるよね」
「あるな」 「あるね」 「あるわね」
俺は思い当たる節が一つあった。
「それ、分かったかも」
「あ? なんだよ」
「花粉症だよ」
「「「「「花粉症!?」」」」」
「特定の花…木とかでもそうなんだけど、花粉が散るでしょ。 あれに対してアレルギーがあると身体が拒絶してくしゃみとか鼻水が…」
「だから一定期間だけなのか、納得だよ。 さすがテイル君。 博識だね」
「ははは…」
この世界に来て花粉症になった事が無くて幸せです。




