第三百五十一話
「ほう、龍神王よ…テイルを上級神として定め、役職を与える、と?」
「主神アレスディアよ…朕だけでなく大勢の神々からその様に…。 テイル殿の統率力と言うか人を魅了する力は些か以上過ぎる故にそれは我ら同様の信仰対象になるべきかと…」
「一理ある。 と言うよりそれしかない…」
はぁ…と溜息を吐き、下界を眺める神達。
「だがしかし、周りに好かれると言う現象に不慣れ過ぎてどうして良いか分かっていない様な感じも見て取れるな。 あれも、地球での生の弊害なのか?」
「主神アレスディア言ってやるな。 俗に言う社畜で碌に女遊びも知らなかったのだろう? それはあぁもなってしまうだろう」
「創造神イナスよ、お前は子を創造し過ぎだ! そのせいで大罪なんてモノが生まれたのを忘れるなよ!!!」
「わ、忘れてはない、大丈夫だ。 確か最後に子を…。 いつだったか」
周りの神々は溜息を吐き、テイルに全てを託していた。
だが、思い出した。
テイルも沢山の嫁が居た事を。 新たなイナスになりかねない事を。
「どうする、テイル殿がイナス二世みたいな感じになったら…」
「そうなったら儂は神を辞める。 下界で木こりでもして暮らすわい」
「「「ははは!!!」」」
何を言っているんだと思いつつも案外本気なのが神達であった。
「だが、そうならない事を願おう。 それが儂らに出来る最後の仕事じゃて」
「いや、最後じゃないだろう」
「お前の最後はこんなもんか!」
そんなやり取りをしていると急に主神アレスディアから物々しい雰囲気が漂ってくる。
「皆楽しそうでよいな。 テイルが天命を終えた後、技巧の神として上位神の位を授ける事とする。 この決定に異議のあるものは?」
「そんなものが居る訳がないでしょうて…」
ふむ、そうだったのか。 と髭を撫でて首を傾げるアレスディア。
「主神ともあろうお方がそんな事も分かっていなかったか…」
「どういうことだ…?」
「みんな主神アレスディアよりもテイルの方が興味あるんだよ…」
「…あの小僧め…」
「やめておけ…創造神である私ですら多分手も足も出ずに消されるレベルだと思うぞ。 主神とは言え戦闘経験が少ない主神アレスディアでは…」
「経験は無くとも圧倒的な力で!!!」
「その力でもテイルの方が上だと思うんだ…。 もう勝ち目は無いから素直に諦めるべきだよ。 はっはっは…」
「朕もそう思うでありますよ、主神アレスディア…」
その日から一週間ほどアレスディアは部屋に閉じこもり、誰とも喋らず、部屋からはずっとすすり泣く音だけが聞こえて来たそうな…。
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