第三百四十九話
「なんだ、このでっけぇ蛇…テイル、これ食えるのか? あんま美味くなさそうだけど」
「いや、多分美味しくないと思うからやめときな? ね? ウワバミ?」
「う、うむ。 拙者は食材ではない…どちらかと言えばこのオロチの方が美味であろう」
ビクゥっと身体を強張らせるヤマタノオロチ。
少し気の毒に感じる。 だって、マックスが調味料を色々取り出しているのだから。
「マックス、お前が【暴食】 だからって流石にそれは見境が無いんじゃない? 八本も首がある蛇なんて食欲が湧くか?」
さり気なくフォローを入れておく。
いや、フォローというよりもなによりも他の蛇達が震えているから純粋にやめて欲しいんだよ!
「それもそうか…」
「そこのウワバミと呼ばれていた貴様…仲間を売り、自分だけ助かろうとするその性分! 叩き直してやる!」
こうなったら止まらないのは団長こと元【憤怒】
「あれはしばらく収まらないだろうね…」
「僕には何が憤怒か分からないよ」
「あぁ、俺にも分からん」
「私も分かってないから大丈夫じゃないかしら?」
お前ら仲間だろ? 良いのかそれで。
皆困惑してるぞ?
「ほ、本当に大罪が付き従っている…」
「付き従っている…か。 それも悪くはねぇが、テイルと俺は親友だ。 主従じゃねぇ。 だろ?」
「まぁ、そうかも?」
いや、勝手に人の領地に転がり込んで、身分どころか種族偽って冒険者になって飯食い尽くしてたの誰だっけ…などとは言えないが。
「僕も友達で、共同研究者の様なモノだね」
「確かに」
ん? まぁ、そうなるか。
一応学校の先生とか、うちの錬金術師の面倒も見てくれたりもしてるしな。
あれ? ところで学校は?
「私も、まぁそれに近いね。 だが、割とこの中では主従には近いのかな?」
「さぁ? でも共に戦場を共にしたし友でしょ」
「良い事を言うじゃないか! それでこそ英雄君だ!」
この人ってハイテンションなのに感情が籠ってないのが怖いんだけど…。
何というか何を考えているか分からんとも取れる。
「ねぇねぇ…」
「まぁ、大罪ってこんな感じの奴らだよ」
「…」
無言でアピールする【色欲】
「【色欲】 はどうなのじゃ…?」
それに応えるロリータニア。 難儀よのう。
「いや、あんまり絡みないから…」
がっくりと項垂れる【色欲】 を慰めているリヴィエラと数人のゴーレム達。
良きかな良きかな。
「して、あの団長とやらはどうなのじゃ?」
虹蛇の率直な問いに俺は応じる。
「あれは曲がった事が大嫌いな直球騎士。 しかも、小手先の思考が無いからああいう風にぶつかっていくしか出来ない。 最初は割と切れ者だと思ったんだけど…」
「今はテイル、お前が居るから何も考えなくて良いからあいつが全力で真っ直ぐ力を振るえる様になったんだよ。 だから、全部お前のおかげさ」
「その通りだよ、英雄君」
「僕もそれには同意だね」
「…」
なんだかちょっと照れくさいな。
「随分としたわれておるのじゃ。 これが王というものなのじゃ」
「なのじゃなのじゃ! 妬けるのじゃ~」
やかましいわ!!!




