第三百四十二話
とりあえず、一日はハメを外させてそっとしておいてあげる事にした。
気が付いたらコウモリも一緒に飲んで騒いでたのでこれはこれで良いのだろうか…。
というか、うちのコウモリさん達はいつ寝ているのか不思議で仕方ない。
…ブラック企業???
どちらかと言うと彼らは働くと言う概念すら知らない節もあるから微妙ではあるか。
ちょっと今度キングともその辺相談しないとな。
「空気が綺麗なのはここの生態系が関係しているのだ。 精霊である我が生態系の管理を何故かやらされている。 他の奴らがやりたがらないせいだ…。 この良く分からない虫が空気を綺麗にする作用を持っているみたいだ」
へぇ。 浄化魔法的な奴なのだろうか。
薬剤として売り出せたらめちゃくちゃ良いじゃん。
「そして、飼育が面倒でな。 舌で突っついたら死ぬくらいには弱い。 なので本気で守ってないと基本的に全滅する。 なんでこんなのが自然界に居たのか良く分からない」
「弱いとかそういう以前の問題だなぁ。 きっと何かにくっついたりして生きてたんだろうね。 共生生物的な何かの類なのかな」
「? 良く分からないがきっとそうなのだろう。 人間とは博識だな。 面白い」
「じゃあ、さっさと仲直りして交流を深めていけるといいね。 アイトワラスだったら他の精霊とか交流が出来るんじゃない? うちのミザリア母様とか…」
「ん? 母君が精霊なのか?」
あれ、あぁ。 普段は精霊の力は意識的に使わない様にしているんだっけか。
娘の出番奪っちゃいけないからね。
「あぁ、母と娘が精霊だよ」
「ははは、なんとも規格外な存在だ! そこまでの者なら最初に邂逅した時に食うぞと言った脅しが本当に聞こえるじゃないか!」
「え? アレは本気だったよ?」
「え? え? え?」
まぁ、半分冗談だけど。
「ところで、酒は?」
「あぁ、舌が蕩けてしまう程美味かったのだが何しろあそこまで騒がしいのは苦手でな…」
「あれはちょっと凄いね。 人族でもアストレアって国の王や俺の父上があんな感じだよ」
「まるで生き物を惑わす魔性の飲み物ではないか。 しかし、これを飲む事で心の奥の叫びを表に出す事が出来ているのだろうな」
「んー、多分人にはよるけどね。 ここは静かだし、もうちょっと飲んでいくかい?」
ぱぁっ! っと見るからに明るい表情に変わるアイトワラス。
蛇なのに表情が分かりやすいってどういう事なのだろう。
まぁ、色んな形の器を持ってきていた事が本当に幸いではあったなぁ。
ボウルの様な形の器に酒をドボドボと注ぎアイトワラスの前にさっと置いてやる。
俺は爽やかな果実水にした。
何かあった時に誰が介抱すると思っているんだ?
万 事 抜 か り な し




