第三百三十八話
コウモリさん達のおかげで始祖、獣王達、ゴーレムを邂逅させることが出来た。
まぁ始祖は一人しかいなかったけれど。
「俺は今代の獣王バーンだ」
「わ、私は、マーガレット王国ユースティティア領領主、リヴィエル・フォン・ユースティティア伯爵です」
「わ、わらわがマーガレット王国所属の始祖のロリータニア・ナントカ伯爵じゃ!」
「…そういえばロリータニアの家名考えてなかったや。 叙勲式に正式に授けるからまぁ…待ってて」
「うむ。 わらわは器が大きいのでな」
獣王のバーンが急に姿勢を正し、こちらの三人に向かい頭を下げてきた。
急に何事かと思い戸惑っているとバーンは声を振り絞り、話始める。
「リヴィエル…と言ったか。 今代獣王として今まで貴殿らにしてきた事を謝罪させて欲しい。 我らの種族は代替わりし、他種族との交流…友好関係は必要だ、対等関係は必要だとの見解に至っている。 今まで先代達が行っていたのは差別であり虐めだ。 到底許されるべき事ではない。 もし、許してくれると言うのであればこの首で我が民達を許して欲しい」
「なぜ、急にその様な…」
「今、ここに来て分かったんだ。 あんたは…いや、リヴィエル殿は始祖殿や、テイル王様へ恐怖心を抱いていなかった。 しかし、俺を見る目だけは違った。 それで確信した。 我が獣人達がいかに愚かな事をしてきたのかと。 かつての獣王達の愚行がいかに卑劣で会ったかが身に染みて分かった気がした。 これも王の責務であろう。 さぁ、俺の首で許されるのならば幾らでも差し出そう。 家臣達を許してくれ…」
彼の目には大粒の涙がとめどなく溢れていた。
王の責務に苦しむ者って大変のだな。 って俺もじゃないか。
キングも大変なんだろうな。
「そんな簡単に首を出したら残された家臣はどう思うんだろうな。 戦乱の世じゃあるまいし。 今は割と平和…でも無いけど平和を目指してるんだから首とか要らないでしょ? ねぇ?」
「は、はい。 今代の獣王様がこれだけお優しい方と知れただけでも心の荷は少しだけ…。 ですが、そうですね、我々は、獣人の方々と違い山や草原での生活には不慣れですから、そう言った面でのお手伝いや助言をして頂く…と言うので過去の清算としては」
目を丸くするバーン。
そんなので良いのか? 表情でそう物語っている。
「そんなので良いのか? そう仰りたいのですか?」
「あ、あぁ」
「では…。 王など辞めてしまってはどうでしょうか」
「「「…は?」」」
「獣王は世襲制。 でしたら辞めるのも自由。 そして、マーガレット王国に所属してしまうのです!」
何てこと言い出すんじゃお前はああああああああああああああああ!!!
「お、おう!!! そうさせてもらおう!!! コウモリの兄さん!!! いっちょ皆にこの事伝えて来てくれねぇか?」
「お任せ下さい」
え、用意周到過ぎない?
「でもよ、一つ問題があるのは知ってるか?」
「え?」
「あぁ、わらわも知っておるな」
「「蛇の国」」
俺が首を傾げているとリヴィエルが口を開く。
「噂に聞いた事がありますが実在するのですか?」
「毒蛇のヨルムンガンド、バジリスク。 同じく毒を持つが九つの首を持ち蛇とも竜とも言われているヒュドラ。 双頭で同じく蛇とも竜とも言われる異様な戦闘力のアンフィスバエナ。 蛇の精霊と言われるアイトワラス。 自分で自分を喰らうと言うウロボロス…。 また、その国の地形や気候を操ると言われる虹蛇と言われる存在。 すべてが言語を理解しこちらと意思疎通が可能だとすら言われている。 しかし、あくまでも伝説の存在であり伝説の国だ」
やばそうな気配が漂ってるんですけど!?




