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第三百三十六話

報告を聞き船内の緊張感は少しほぐれていた。

敵と思われていた存在が一つ減ったこと。

なによりもうちのヴァンパイア達の優秀さには何度も関心させられてしまう。

今回の交渉に関しては独断だし。 俺が後から否定しないのを分かっての行動だったのだろう。

これが信頼関係である。


「血…血の結界…こんな広範囲に!!!」


「確かに、魔力…いや、魔素の込められた薄い霧の様な感じはあるけど、これが血?」


「はい、血です。 確実に」


ヴァンパイアが言うのならばきっと間違いはないのだろう。 しかしここは海上とはいえもう敵の懐とは。

飛べる相手である以上は海上というのを活かす事は一切出来ない。

相手がこの状況を作っているという事はこの視界の悪さも同様だろう。


『貴様らはここがどこだかわかっておるのだろうな?』


何処からともなく聞こえる冷たく突き刺さる様な幼い声…え? 幼い声?


「なぁ、テイル。 嫌な予感がする。 変な意味で」


「同感。 俺も」


『何をコソコソと話をしておる! わらわにはしっかりと聞こえてお…おるぞ!』


いや、聞こえてないよな。


「で、そこまで喋りかけてくるんだったら姿を見せたらどうだ?」


『良かろう!』


バサッ! バサッ! と小さな黒い翼を羽ばたかせながら甲板に降り立った幼女。

うーん。 少しドーラにも近い雰囲気は無くもないが。

でもこっちの方が生意気っぽいな。


「わらわは、最後の始祖…ロリータニアじゃ…」


最後…?


「どういう事?」


「話は長くなるのじゃ。 良いか?」


「皆は良い?」


コクコクと頷く。


「助かる。 わらわ以外の始祖は皆他の種族を見下し、傲慢な態度を取り…それだけに飽き足らず虐め…なんて言葉では収まらん様な事をしてきたのじゃ。 お陰で殆ど種族との交流は断絶。 ヴァンパイア達とすら交流が無くなってしまい、最後には高いプライドが故に魔力しか糧を取らなくなり死んでいった。 単なる栄養失調じゃ」


「なんとも複雑な…。 で、ロリ幼女さんはなんで栄養失調になってないの?」


「誰がロリ幼女じゃ! わらわは花の蜜や、薬草も好きなのじゃ。 たまに食べる海の魚とか言うのも好きじゃ! あと、前に獣人の所で食べた肉と言うのも美味かった…かれこれ何十年と食しておらんが」


「あぁ、それなら少しうちから持ってきてるのがあるからあとで調理しようか。 また詳しい話はその時聞かせてくれるかな? 屋敷…家とかある?」


「うむ、あるのじゃ。 そこに船を停めて、上陸するとよい」


「助かるよ」


そうして始祖と話をする事には成功した。

うーん。 思ってた展開とは全然違ったがまぁ良いだろう。


結果良ければすべて良しって奴だ。


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