第三百三十二話
「テイル殿…一つ良いかな?」
割とフランクに話しかけて来てくれる様になった先住民? の方々。
大罪に対してもう敵対心も無いみたいだし。 まぁ、ここに来た目的ももうなくなっちゃったんだよな…。
「はい! どうしました?」
「この土地は多少特殊なのです。 他の大陸への行き来もしやすいでしょう。 実際聞かせて貰った転移やその門と言う物はテイル殿がほぼ必要不可欠な物では? 例えば魔力の供給とか。 常時大罪や賢者を複数人常駐させておけばそれも解決するでしょうがそれは国が安定して来るまでの間でしょう? 安定してきたら彼らは各地の守護を任されるはず…。 となれば」
「核心的なところを突いて来ますね。 実際そうです。 なので、船などの移動手段は必須になります。 それで?」
にやり! と笑みを浮かべて、大きく腕を広げ演劇的な振る舞いをしながら高らかに言う。
「この地は未開! すなわち国ではない! テイル様が我が物とし、私を領主だと! 貴族だとお認め頂けましたらしかとお治め致しましょう! かつて王国では研究者は忌避されており忌々しい存在と言われておりました。 魔法使いは研究を好む者。 王家はその傾向を良しとしませんでした。 リア様やニア様はさぞ苦しい思いされたでしょう。 辛い思いされたでしょう。 だからこそ。 償いの機会を!!!」
う、胡散臭い。
丁度良い所にリアとニアが居る。
…。
こっちを面倒くさそうに睨んでるんだけど。
「テイル君…その人の言っている事の半分以上は事実だよ。 でもその他の半分は胡散臭い」
「そうだねぇ、私もそう思うよ。 だけど、もし…もし本当にそう願うのなら、制約で縛ってしまっても良いんじゃないかとは思う」
おぉ、初代賢者。 末恐ろしい。
「あぁ、確かに。 それもそうだね!」
俺と、さっきの胡散臭い人は目を見合わせて震えあがっていた。
しかし、その胡散臭い人はしゃんとし直し、ひとつ咳払いを行うとゆっくりと、聞き取りやすい様に、先ほどとは違った面持ちで話し始める。
「私は貴方方へ恩返しがしたいのです。 王家に生まれ、魔法の才があり、研究に没頭していた自分の憧れだった貴方方への…恩返しが」
「…待ってよ。 王家は殺したはずじゃ…」
「!! まさか!」
「とうに除籍されておりますよ。 むしろここに居る者達が何故王族だと思いますか? 除籍されたり、死んだ事にされている者なのです。 自分はその代表である。 リヴァエル・ル・ユースティティアでございます」
「「!!!」」
「ど、どういうこと!?」
「テイル君。 旧アストレア王国は正式名称はユースティティア王国って言うんだよ。 親しみを込めてアストレアって呼んでた人が居たから名前が引き継がれたって感じかな」
予想もしてない話が来たぞ。




