第三百三十話
悪戯の度を越してませんかね、コレ。
オオスズメバチとかさ? 駄目だよこれ。 どうせなら可愛い蜜蜂とかにしてくれないかな。
まぁ蜜蜂的な奴はもうこの世界にも居るから蜂蜜は取れるし、役割は被ってしまうんだけれども。
「で、このスズメバチモドキは何が出来るんですか?」
「聞いて驚くなかれ?」
「は、はぁ…」
「なんと彼らは、使役すると偵察が出来ます!!!」
…。
「餌は? 滞空時間は?」
「餌は契約者の魔力で、速度や契約者の魔力量によって飛んでいられる時間は異なりますが、おおよそ三日は持ちます。 あくまで基準なので、ご参考までに。 これは基本的にテイマーの素質が無いと契約が出来ない子達なのです。 魔物とゴーレム、ホムンクルスの中間的存在…と言ったところですかね」
このスズメバチの説明をしている時だけ彼らが生き生きとしていて、とても良かった。
きっと旧王国の人々は研究者気質だったんだろうな…。
「なるほど。 テイムに関してはこれから研究をしていきたいと思っていたところなのでよさそうだ。 寿命の方は?」
「それも通常の生物…特に虫と比べると野生でも遥かに長く数年から数十年と生き、魔力を枯渇させなければ契約者が死ぬまでコレも死なないと結論が出ました」
それは重宝しそうだ。 斥候とかに良いんじゃなかろうか?
「なぁテイル? 冒険者パーティとかだったら斥候に欲しいぜこれのテイマー」
「うん、俺も思ってたところだよ」
「陛下、暗部にコレの使い手が居ましたら諜報に長ける事は間違いないでしょうな」
「それもありだね」
「お気に召しましたか?」
…優れているよ。
とっても優れているよ。 ちょっと腹立たしいくらいにはね。
「見た目以外は最高だね」
「そうですか…? 可愛らしいのに」
「かわいらし…?」
他の全員も首を傾げていたので俺の感性はきっと間違っていないはずだ。
え? 俺に対して首を傾げてるわけでは無いよね?
「テイル君、大丈夫、アレは可愛くないから。 むしろ怖い系だから」
「良かった…俺の感性がぶっ壊れたかと思った…」
そしてさらにポンポンと無言で肩を叩いて慰めてくれるマックス。
それは何か怖いからやめて欲しい。
「皆さん仲が良くて良いですね。 大罪と言う咎を背負いながらヘラヘラと…。 よくもまぁできましたね…」
「「「「「!!」」」」」
「まぁこれが最後の恨み言です。 今の貴方達に悪意はないでしょう? それに、過去の貴方達にもきっと理由があったはずだ。 接していればわかりますよ」
「すまねぇな…」
「マックス、謝るだけが今すべきことじゃないと思うよ」
「そうですよ」
「そう…だな」
「ってことでここはいっちょ! 宴会とかどうかな!?」
その瞬間ごちいいいいいいん! という綺麗な音がその場に響き渡ったという。




