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第三百二十五話

「仕事多すぎやぁぁぁぁぁ!!!!!!」


響くジャービルの声。

それもそうだろう。 取引先が一気に増え、人手が足りないテイル商会に臨時職員としてアルガス、ジャービルの二名が加わったがそれでも足りないのだ。


「ワイも聞いてへんでここまで仕事が多いなんて…」


「ま、まぁあのテイルとあの嫁ちゃん達の為ならしゃーないわ」


「でもワイをこきつこたんやから見返りはきっちりもらわへんとな…」


「アンタはテイルにどんだけ儲けさせてもらってると思ってんのや」


「まぁ、テイルちゃんに恩返しっちゅうのも悪くないわな。 で、今日の仕事はなんやこれ」


書類を整理するために通りかかったメイカに問いかける。


「私には難しい事は分からないので…これを置いたらサリィに聞いて来ますね」


「頼んだわ~」


ここである事が不思議に思ったアルガスはその場では声に出さなかった。

しかし、ジャービルにはお見通しだったようで…。


「なんで貴族の令嬢があんな脳筋かって思っとるやろ? あの子はテイルの騎士になるために鍛錬しかしてこんかった…って言っとった気がするわ」


「うろ覚えかいな。 まぁ、それならしゃーないかぁ。 でもなぁ、この書類の山は無いやろ…」


「手が回らへんねん。 口動かしとらんで手動かさんかい!」


「おー、こわこわ。 って、コレめちゃくちゃ計算しっかりしとるやんけ。 ほとんどミス無いで…」


「まぁ、平民でも簡単に学べる様になったからな。 かと言って全部合っとるワケやないしチェックは必要やなぁ」


そういう会話をしていると、サリィがやってきた。


「ジャービル様、アルガス殿…本日はこの書類の確認とミスの訂正して再提出のみになります…」


「あぁ、任せて欲しいわ。 ウチのアルガスは書類仕事めっちゃ苦手やから実質二人分働かなあかんけどな!!!」


「面目ないわぁ…」


「ま、まぁ、お茶とお菓子をお持ち致しましたので、後で一休みなさって下さいね」


「さんきゅーな!」 「ありがとさん! 流石はサリィちゃんやで」


「いえいえ。 また何かあったら聞いて下さい!」


そう言って去っていくサリィ。


「サリィちゃんは城で侍女やってた王女とは思えへんくなってきたなぁ」


「まぁ、茶は今でも美味いし片鱗はあるんやろけど…。 てか、あの噂はホンマやったんか」


「せやで? なんやったらマーリンに聞いてみ? ところでなんでアンタだけ茶飲んでリラックスしてんねん! 仕事せぇや!」


「いや、ほら…だってワイ営業向きやし~?」


「そないな事どうでもええねん! はよやってや! ここの近くの串焼き屋閉まってまうやんか!」


「しゃーないなぁ。 ほな、一肌脱ぎまっか…」


そうして並ぶ二人は本当に仲睦まじく見える。

が、片方は凄腕商人、片方は賢者…。

かなり歪な一家であった。


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