第三百二十四話
一方で残された女性陣は…と言うと。
「なんで最近構ってすらくれないのかしら?」
「戦闘もいつも補助だものね」
公爵令嬢と王女は不満があるようだった。
だが、それとは違う反応もあった。
「きっとテイル君は私達を守ってくれようとしてるんじゃないかなって…」
「私もマリアと同意見だね」
「確かにそう思います。 私は彼の剣でありたいのに」
「ねぇ、皆忘れて無いかな? この国が誰の国か」
「それは分かってるわよ?」
はぁ…と溜息をつくナナ。
「あのさぁ…」
「ナナよ。 ワシらが言うぞ」
マーリンの登場に皆の間に沈黙が起きる。
まさに静聴と言ったところか。
「テイルは大罪と剣聖パーティを連れて行った。 それならばこの国の防衛は誰がやるのじゃ?」
「「「「「!!」」」」」
「いくら狭い国であるとはいえ、もしも三賢者で守り切れぬ敵が出たら誰が戦力になる?」
静かなる問いかけに、サリィは答えた。
「私達…ですか…?」
「テイルは皆の成長を良く知っとる。 だからこそ最低限しか戦闘に参加はさせなかったのじゃ」
皆首を傾げる。
当然だろう。 成長を分かっていながら戦闘に出さない。
大きな矛盾じゃないのか? と。
「分かっとらんな。 それでもテイルの嫁かのう。 お主らはテイルにとっての秘密兵器なんじゃよ。 既にお主らの戦闘力は個々で見てもワシらに追いつきつつある」
「えっ!?」
「ほっほ。 王女がはしたない反応をするでないぞ? と言うより王女は変わったのう。 前向きと言うか…弱弱しさが消えた様に見える」
「そう…ですか?」
「皆良い顔じゃが…。 テイルが居ない時の柱である自覚を皆持ちなさい。 これでも分からぬか?」
「いえ、頑張れると思います!」
それを聞き、厭らしく笑みを浮かべるマーリン。
「では、テイルの執務室にある大量の書類の山…どうにかして欲しいのう。 これじゃ色々回らなくなってしまうのじゃ」
「わかりました」
「あ、それと…誰かジャービルに着いて行って商談を頼むぞい」
「ア、ハイ」
「それではの! これから冒険者と魔法師達の特訓じゃ!」
「それでは私を連れて行ってください! 彼の騎士である私なら冒険者の相手に向いているかと思います」
「…殺さん様にな? 絶対じゃぞ? 頼むから殺す事だけはするでないぞ?」
「え、マーリン様は私をなんだと思っていらっしゃるのですか?」
「脳き…。 猪突猛進な剣馬鹿じゃな!」
「さ、流石にそれは言い過ぎでは…?」
サリィはすぐに否定してあげようとしたが…。
「猪突猛進…剣馬鹿…良い響きです」
「だ、誰かこの脳き…をどうにかしてくれぬか?」
マーリンのその問いかけに皆首横に振っていた。
それを見たマーリンは頭をポリポリとかきながら、冒険者達の待つ場所へと向かった。




