第三百二十一話
「い、良い演説だったじゃないか」
プルプルと笑いを堪えながら話しかけて来るマーリン様。
おい、団長の後ろには俺の嫁達が声を殺して笑ってるの見えてるからな!
最近ゴタゴタしててあんまり話せてないのもやばいけれど…。
「ま、まぁテイルっぽくて良いじゃないか」
ガイル様? ぶん殴るよ?
「おい、テイル? そんな事したら老人虐待じゃ! 老人にも人権を!」
「魔物やら魔人を素手でぶん殴ったり意味の分からない規模の魔法で消し飛ばしてた人達が老人だなんて…老人に謝ってください」
団長とマックスが笑いを堪えられずにゲラゲラと笑い出す。
釣られて【色欲】も笑う。
あの二人が居ないのは森の素材の研究か。
「さて、テイルよ。 これからどうするのだ」
真剣な表情で問いかけて来るマーリン様に俺はしっかりと答える。
「錬金術師は生産職であり、魔法職であり、戦闘職です。 それを普及する為に自分の知名度を限界まで引き上げますよ」
「いや、この大陸だけじゃったら知名度一番高いぞ…」
「それなら、この世界で一番の知名度にならないと…ね」
「「馬鹿じゃ…」」
なんでや!
「坊ちゃま。 剣聖殿達の為に先行したコウモリ部隊が新大陸を発見してしまったようです。 しかも、そこに居るのは血を濃く残した古代の人々の末裔でした。 多分…大罪の事すら伝承にあるかと」
「オイ! そこはどこだ!!!」
「大陸中央部にある湖にある古代転移門。 これの解読にはリア様とニア様が携わりました。 お陰ですぐに開いたそうです。 そして、起動して分かったその座標の位置ですが…。 全能の島…とリア様とニア様が仰っていました」
「「はっ?」」
「どうした団長、マックス?」
「全能の島って名前は知ってるゼ。 なんせ俺達が皆殺しにしたんだからな」
「なっ!」
「私は知っている。 あそこは王の隠れ里。 旧王国の王城にはあそこに繋がる転移門があったわ。 だとしたら今残っているのは…」
「旧王国の王族や貴族の末裔…」
「全てがそうとは限らないが…。 よりによって…」
「なんで悲観してるの? 大罪って癖にそんな顔するのか?」
「主、もう我らは大罪ではない」
「だったらどうした? 過去は変わらないのか?」
「「「!!!」」」
「し、しかし!」
ふざけるなよ。
「じゃあお前らの首をその人達に捧げるのか?」
「そんなことは!」
「無いなら胸を張ってろよ。 昔と今は違うんだ」
そう、これからは違うんだよ。




