第三百十二話
ミチミチ…バキッ!
え、骨折れた…痛ぇ…。
そんなの関係なく加速して行く。
ま、まぁなんとかなるだろ。 オーガに蹴られても魔法で治ったくらいだし?
「一閃!!!」
バキバキバキ…。
一体何の音だか俺にはもう分からなかった。
意識が遠のきそうになる中、なんとか着地する。
咄嗟に駆け寄ってきたマリアとサリィに回復の魔法を掛けて貰えた為、なんとか堪える事が出来た。
「テイル(君)!」
「ありがとう…。 なんとか助かったよ」
「グガアアアアアアアアアア!!!」
炎人も相当苦しんでいる。
これは穢れの叫びだろう。 と言うよりもあの穢れって人の悪意の部分を感じ取っているから、これはきっと…。
「人を生贄に何かを成そうとしたのか。 愚物だ」
「団長…それは俺もそう思う。 けれど…」
俺は回復の魔法でも一瞬では治らず、痛みに耐えながら言葉を発する。 すると。
「分かっているさ。 だが、この気持ちは誰かが代弁すべきであろう?」
「だからって団長が背負う必要は…「ある」」
「アレを野放しにしていたのはこちらの代からだ。 今更になって、と言う気持ちも無い訳ではない。 勿論、今代の勇者に擦り付けてしまえという気持ちだってあった。 だが、我々は…」
「「勇者」」
「分かっているでは無いか。 そうだ…身体が勝手に動いていた。 それに俺の部下はちゃんと言いつけを守り、臣民や貴族を訳隔たり無く守った。 ならば俺はそれに応え…」
「皆、ありがとうね。 何かを守りながらの戦闘は容易ではないよね」
「テイル君…いや、マーガレット陛下よ。 この場を以て言わせてくれ。 我らが国を…世界を救ってくれた事。 感謝する」
「エクスさん…」
「オレモカンシャスル」
…。
英雄と呼ばれている二人にそう言われるのはどこかむず痒く、でも嬉しい所もある。
「そして、我々は教皇や、並びに他の犠牲になった方々を弔わなければいけない。 何よりも、ドーラ様達の異変に気付けなかった。 すまない」
エクスさんは深々と頭を下げる。
その謝罪は全て俺に刺さる。
ガガルさんも…。
苦しくなってくる。 呼吸すらしているのか分からない程に。
「テイル…。 その様な顔をするな。 我は元気じゃ!」
「ど、ドーラ様!!!」
一体幾つもの声が重なっただろうか。
「私もちょっとやられてましたねぇ。 先輩のお陰ですぅ」
このウザイ喋り方は山…ナールム!
「我らはとうに回復しておる。 故に一つ皆に言うておく言葉がある。 此度の件は我々神の域に踏み入りし者達の問題であった。 貴殿らを巻き込んだ事…深く謝罪する」
ドーラとナールムは深々とお辞儀をする。
それを見て俺も頭を下げようとした…しかし。
「テイルよ、お主は被害者じゃ。 我らが業を背負おう」
「そんな事は…」
そこから俺とドーラ、ナールムはアイコンタクトのみで一瞬やり取りを行っていた。




