第三百八話
「ぐぅ…。 耐え抜く事が出来なくなってきている…。 流石に使い過ぎているか…」
「その武器を手放す事は出来ないのですか?」
急に現れた俺に驚く陛下。 こんな笑顔で現れたら逆効果だったか?
「どこまで聞いておるんだ? テイルには話していなかったと思うが」
何処まで言って良いべきか。
というか今思ったけれど俺のベルゼビュートも俺の事喰いたいとか言ってたけど。
…武器って自我あるのか。
いや、聖剣だったり聖刀を持っていた時もそうだったかもしれないけれど。
「多少は…。 と言うか、その武器は…」
「ずっと仕舞っておった。 しかし、ふと見ると近くにあるんじゃ。 そして、毎回毎回戻しておった」
声は聞こえていない…と。
ならば…。
「その剣を俺に渡して下さい。 すぐに返しますよ」
「出来ぬ」
「何故ですか? 陛下…?」
「コレが渡すなと…言葉は聞こえぬが、ずっと感じる。 テイルに近付けるな…と」
ふむ、喋らないが自我がある…か。
確かに俺にもアレの異様さはビンビン伝わってくるが。
アグニ様自体の気配は感じるがここまで禍々しいのは一体なんなのだろうか。
「う…ぐっ…! 燃えろ! 燃えろ!!」
陛下が俺に対して剣を振り抜く。
そしてその刀身からは魔剣よりも濃く熱い炎が吹き散らかされている。
あれは穢れている…。 神の炎とはかけ離れている。
ならば要因としては例のあいつが関与しているか。
「アグニ様、しばし我慢していて下さいね。 ティナ! 団長! 戦闘可能な全員に指示を出して陛下を抑えつつ外敵の排除を頼む!! そして、異常があれば元大罪達の”能力の解放を許可する”」
「「御意」」
そして俺は駆ける。
ヤツはきっと此処だ。
転移と身体強化を駆使して移動する。
「ブッブッブブー(すごーい!)」
いつの間に居たんだ!?
この気配の消し方は異常だよね?
「アル? 少し危険が伴うからここで待っていて…」
「ブブ(お断りです)」
「…分かった。 じゃあ、俺から離れないでね」
それを後に俺はもっと速く駆ける。
疾く疾く駆けろ!!! 陛下が手遅れになる前に!!!
「そろそろ…か」
「ブッブ(気配は感じます)」
なら、当たりか。
帝国の帝都にある大きな大きな城。
元々皇帝の別邸として存在した第二の城。
ここ…か。
「これは何かの結界か?」
「ブッブッブ(結界を無理やり壊すので…先に行ってください)」
気付いていたけれど、アルも…。
「気付いていますか。 自分はとある神の欠片ですよ。 だから、貴方をサポートしています」
「うわ、喋った!!! しかも堅苦しい!!!」
変なところに驚いちゃったじゃないか。
緊張感が無くなってしまったよ。
「さて…。 俺に月の加護があらんことを。 行ってきます」
「気付いてしまったのなら仕方ないですね」
結界の壊れた部分から中へと侵入する。
ここからが正念場かもしれない。
「起きろベルゼビュート…!」
視界を覆い尽くす様な人工魔族達に俺は刃を向ける。




