第三百五話
バチバチとヴァンパイア達から電気が走っているのが分かる。
「オイオイ、お前の雷便利だけど怖すぎねぇか?」
遠くでマックスがこちらに声を掛けて来る。
「あはは…。 それは俺も思ってたよ? 流石にここまでとは…」
残すは…。
「チッ! この龍の娘も神族ではないか! 当たり損だな!」
上手く連携しつつ戦っていたので、今は丁度ドーラと団長が戦っていたのか。
「こいつクソ真面目に正面から戦ってやんの!!! 面白れぇ!!!」
お前には人の心と言う物が無いのか? 援護してやれよ…。
そう思いつつも俺はこのヴァンパイア達を介抱しなければならない。
あれ? これ雷の力でヴァンパイア達全部自由の身になってない?
という事は…。 起きたら血を求めるか?
「坊…ちゃま…」
「キング! 大丈夫か?」
「爺はどうやらここまでの様です…。 最期を貴方様に見届けて頂けるという最高の褒美を得れたのです。 もう何も悔いはありま…」
俺は無言で手に力を集める。
神族に入れたのならきっと出来る。
「汝、我に忠誠を誓うか?」
「坊ちゃま…? もちろんにございます」
「汝、死せぬ身体になっても我に仕えるか?」
「? もちろんでございます」
(まだ力を制御しきれていないテイル殿が其れを使うのは些か危ないと思うぞ。 失敗したらどうする?)
じゃあ、キング達を見殺しにしろって言うのか。 アリサの時の様に。
(…朕は忠告はしたぞ。 後は好きになさい)
俺は聖刀の先で指を突き、血を流す。
「坊ちゃまっ!?」
「我が御心に従うのならばこの血を汝に」
「ありがたく…頂戴いたします」
俺の指先の血をキングは指で掬い取り、口へと運ぶ。
いや、俺の血が身体に触れるだけで良かった様な…。
まぁ深い事は気にせずとも良いか。
「テイル君!!! 君は一体なんて力を使っているんだ!!!」
「そうねぇ、これだけの力じゃ英雄君にも少なからずリスクがあっただろうね」
妻達は負傷者達の救護に回っていて見えて居ない様で良かった。
俺は彼女らに背を向けてキングに言い放つ。
「これでキングはヴァンパイアと天使の中間的存在になったよ。 俺の力が強ければ完全に天使になってた思うけど」
「ありがたき幸せにございます」
…待ってくれ。 違和感が凄い。
「キング? 鏡って持ってる?」
「? もちろんでございますが」
「一旦自分の顔を見てみてよ」
良く分からないままキングは鏡をどこかから取り出し、自分の顔を見る。
と言うかキングもどこかにマジックバッグを持っているのだろうか?
「なっ!!!若返っておりますぞ!!! しかも異様に美青年でありませぬか! 貴族の子女と言われても通る顔立ちにございますぞ!!!」
「うーん…。 どうしてだろうね」
「若返ったという事はもっとバリバリ働けますな!」
この人ワーカーホリックになってない? 大丈夫?
で、他のヴァンパイア達は…。
普通のままだな。 なんとか大丈夫ではあったみたいだ。
さて、マックス達は…。
「おい、短気やろう!!! なんで俺ごと攻撃しようとしてんだよ! ぶっ飛ばすぞ!!!」
「うるさいぞ無銭飲食。 貴様の命くらい一つや二つ失っても誰も気付かんわ」
「これだから脳筋って嫌なのよ…。 何も美しく無いわ。 あっちの美青年達の方に行ってくるわね。 もう精神汚染とかは殆ど抵抗してあるから、あとは任せたわよー」
そう言ってヴァンパイア達の方へと歩き出す元【色欲】
…異形になったドーラですら困惑して動き止まってますけど…?




