第三百四話
(オマエノココロノヤミモクラッタ)
…負の感情を喰らったという事だろうか。
何もかも見透かされているな。
(イツカオマエジシンヲクラウ)
よし、この刀は近い内に封印しよう。
そしてマックスを問い詰めないといけないかもしれないな。
なんて雑念なんかは全てコレの攻撃を避けながら行っている。
錬金術と魔法を同時に行使しつつこれだけ動けるなんて我ながら器用だ。
「さて、聞かせておくれ。 君に何が植え付けられたのか」
「…」
言葉は無く、ただただ俺に近寄らないで欲しいと思っている様な行動しか行わない。
まだ自我があるのだろう。
神ならば、助ける手段は確実に存在するだろう。
しかし、それをすると洗脳を受けていたであろう時に眷属とし、進化すらさせたヴァンパイア達をどうにかするのには手が掛かる。
雷が地を這う様に思考が巡る。
(貴方達には縁があります。 もちろん、敵にも存在するでしょう。 それならば…)
其れを断ち斬れと…。
いや、それならきっとこれで行ける。
「山田? 悪いけどさ…ちょっと痛いぜ」
ベルゼビュートに白電を纏わせる。
これで…。
一気に距離を詰めて抜き放つ一閃。
それは雑に見えるただの一振りである。
しかし、それは…。
「我流、一振りの煌めき」
確かに振り抜かれたその刃。 しかし、異形と化したナールムは無傷だった。
あぁ、それで良い。 それで良いんだ。
ジュク…ジュク…と音を立て崩れ行く異形はまさに理から外れた異常で、異様なモノだった。
崩れ行くに従い人の形へと変わってゆく。
上手く行ったか。
「テイル! お前何したんだよ!」
「あぁ、山…ナールムを蝕んだ術を喰らい、それによって繋がった術者に対しての呪詛返しだよ」
「どうりで…。 見ろよ、アレ」
単に時間稼ぎをしていたマックス達だったが、術者が不安定になったせいで異形が動かなくなる。
よし、良いぞ。
ならば、後は…。
この術を喰らわせるのみ。
「喰らえベルゼビュート!!!」
斬撃を飛ばす。 あれ? 飛ばした斬撃でも喰えるっけ?
だが、結果として成功しているので大丈夫のはずだ。
「グ…グ…ボッチャ…マ…」
「キング。 貴方達は繋がった縁から呪いを入れられていたのでしょう。 もう大丈夫だよ」
指定座標”ヴァンパイア”
「我流、白雷神閃」
「オイ、テイル…お前それは狡いだろ」
「どこがだよ!」
そして、そんな軽口を言い合っているとヴァンパイア達は倒れる。
目が覚めたらどうなってしまうのか…不安ではあるが。
それでも、キングはきっと…。




