第二百九十九話
う、うーん。
作ったのは良いんだ。 屋外でも簡単なチャーハンだったから。
一杯食べるかな、と思って具沢山にしておいた。
残りは取っておけばいいからな。 とは思っていたが。
「綺麗に…なくなったね」
「あれは、大食い大会に負けぬ食いっぷりでしたぞ」
「キング? そのニヤケ顔やめてくれないとぶん殴りたくなる!」
「ほっほ…色々と大変でございましたからな…」
「ところで、いつの間にティナはあんなに食べる様になったの?」
「さ、さぁ分かりませぬな。 しかし…あれはあの躯体のいずこに入って行くのでしょうかなぁ…」
きっと【暴食】もびっくりだよ。
ここまでだと本当に驚きが隠せないよ。 一般人三人分は食べてたな。
流石にそれは食べすぎと言いますか。
「坊ちゃま…あれは、もしや他のお仲間の分を避けていたのでは…」
「それならそうと声を掛けてほしかったけどな。 まぁ、後でそれも聞いてみるか」
さて、休息の時間も終わりだ。
皆に乗り込んでもらい、俺はまた御者に乗り込む。
ここからスパートをかけていくぞ。
おや、馬の元気がどんどん良くなっていくぞ…?
この世界の馬は姿こそ似ているが地球の競走馬とは違う。
明らかに長距離が走れる。 これは異常だ。
だが、まぁ良いか。 これもこれで慣れていくしかない。
「坊ちゃま! そろそろ気配を感じますぞ」
「そうだね。 これは多分先行を行く人達の最後方集団かな。 だが、何かおかしいぞ」
「ほう、これは多分水が足りぬのかもしれませんな」
水ならいくらでもある。
分けてあげればいいか。 足りなくなっても水ならどうにか出来るし。
「すみませーん! 何かお困りですかー!?」
俺はフランクに声を掛ける。
いちいち崇められてたら堪らんのでね。
「は、はい…。 水が無くて休憩を小刻みに入れていたら少しだけ遅れてしまい…」
「でしたらこれをどうぞ。 この樽は手を触れると水が出てきます。 錬金術師の作った魔道具ですので、安心安全です! それに魔石が無くなるまで使い放題です!」
「こ、こんな高価な物宜しいので?」
「はい、余ってますから!」
「ありがたき…。 いつかしっかりと代金をお支払い致します」
「ほっほ。 でしたらテイル商会にお支払い下さいませ。 我らが商会でも随一の売れ行き商品に御座いますので」
キング! 余計な事を…!!!
「ま、まさか! そちらのお若い御人は…」
「ま、まぁそんな事どうでも良いじゃないですか! 先を急ぎましょう! 俺達が前を走るので任せてください!」
俺は何を任せて貰おうとしたのだろう。 良く分からない言葉が出た。
「キング? 後で覚えてろよ?」
そう言ってまた進行を開始する我々であった。




