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第二百九十八話

なんで御者をやっているんだろうか。

そんな疑問などとうに消え失せた。

俺達しか馬を扱えないって薄々は気付いていたから。

そう、薄々ね。


「皆さん、揺れは平気ですかー?」


はいっ! と元気な声が返ってくる。

…ここだけ平和な世界が生まれているきがする。

無駄に恐怖心やらなんやらが芽生えてしまうよりは断然良い状態だろう。


「なら良かった。 ご気分が優れなかったらすぐにお声かけ下さい。 すぐに馬車を寄せますので!」


畏まりました! と元気に返ってくる。

統率が取れ過ぎてて怖い。

軍隊とか騎士団とかそんな次元ですかここは?

しかし、こう敬われてしまうとちょっとむず痒さを感じてしまうのはまだまだ若いからだろうか。


「坊ちゃま。 あと数刻ほどで…」


「分かったよ。 でも、まだそれだけ掛かるか。 一旦休憩入れた方が良いかな? 食事とかもあるだろうし」


「その方がよろしいかと」


「皆、そこの広場に一旦止めるから各自休憩で!」


はいっ!!!


良い返事だ。 よきかなよきかな。


「ブルルルルゴォ」


「え、なんで野生のボアまでここに居るの?」


「なんか…着いて来ていた様ですな。 先に行った部隊はあのボアも引き連れております故、コレは食料にするのは惜しいですな」


「多分コレ希少種ではあるよね?」


「ブルルルルルル!」


どうやらそうらしい。

こいつはあのボアの匂いに釣られて来たのか?

フェロモン的なやつだろうか…。


「よし、これ食うか? なんか一応他のボアとか俺の所で飼ってたやつらと同じだけど」


「ブルルーッ!」


喜んでいる…?


「ブッブッブブー(この子喜んでいますよ! 美味しそうって!)」


「ナイスだ、アル!」


手渡しでボアに餌をやる。

嬉しそうに鼻を擦り付けてくれるのは嬉しいが、べとべとになっていくのだよ。 それに…野生の香りが。

く、くさいとは思って居ないが、ね…独特で鼻が握りつぶされそうなくらい芳醇で…。


いや、臭いです。


「おい! ボアの子! 魔法掛けるからこっちきて!!!」


即座に魔法で綺麗にする。

おぉ、一瞬で匂いが消えたぞ。

これは本当に便利だ。 生活で使う魔法の類は難易度の低い類のモノだが利便性だけはずば抜けているし、魔力消費も少ないのでとても良い。


「しかし、あの馬車について来るか…」


「ですな。 普通の野生の獣や魔物であれば…」


「振り切れてる…よね。 あれ? ところでティナは?」


「あちらで遊んでいるのがそうでは…」


あぁ、子供に紛れてなんか遊んでるよ。

あれは…ほっといても良いか。

殺気を感じれば流石に動くでしょう。


「さて、料理を作るぞ! 手伝えそうな人はこっちに来てくれるかな?」


わらわらと人が集まってくる。


「いや、普段から料理に触れている人だけでお願いね…」


その一言だけで先程の三分の一くらいに減った。

残った人達には仮眠してもらう事にした。



さぁ、料理の時間だ!!!


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