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第二百九十七話

馬を走らせていたら一塊の集団が見えて来た。

先頭を行く集団にしてはやけに進行が遅い気がする。

何かあったのだろうか。

俺達はその集団に近寄って行き、声を掛ける事にした。


「申し訳ありませぬ。 マーガレット王国の者ですが、先を行く者達よりもかなり遅れている様に見えるのですが何かありましたかな?」


キング! 良い仕事をするね。


「はい、私達はかなり辺鄙な場所に村を構えており、報せが遅くなってしまったのでしょう…。 なので私達がこの移動を知った時にはもう既に…」


「出発したあとだったということですな…」


「はい…そうなのです」


「であれば我らも同行させて頂いても?」


「宜しいのですか…?」


「えぇ、構いませぬよ。 ねぇ、テイル様」


き、キングがしっかりと対応している。

凄い。 流石はうちの唯一の常識枠!

え、って言うかなんでヴァンパイアの長が一番常識あるの?


「あぁ、構わないよ。 休憩の際はこちらで食材も出そう」


「ま、マーガレット王でしたか! とんだご無礼を…」


「気にしてないので大丈夫ですよ。 皆さんお顔を上げて下さい」


ありがたやー! と、皆崇め始める…。

俺は信仰対象か何かかよ!

あまり嬉しい気持ちにはならんぞ!


「マーガレット王のご活躍は私共の村にすら届いているのです。 きっと都市では称えられているに違いありません。 いや、無ければ私共で称える様にさせましょう」


「それはちょっとやめてもらって良い…?」


「なっ! なんとお優しい…。 これは噂にたがわぬ…。 凄いぞ! 皆! 我々は救われたのだ! テイル様に我らが魂を!!!」


それを復唱する集団。

えぇ…なんか怖いんだけど。

この人達、隔離されてたわけでは無いよね?


「あはは、そこまでしなくて良いからね」


俺はもう苦笑いしながらそういう他無かった。


「ははは、何を仰いますやら!」


えぇ、この人達聞く耳持ってないよ…。

置いて行っても良いかな? 駄目?

キングですら笑いを堪えるのに顔を背けている。

う、裏切らないでくれえええ。


「テイル様。 失礼します。 先頭の集団は中央地点にかなり近付いております」


「うわっ! ティナ? どこから出て来た? わ、わかった。 こちらも急ぐよ」


ティナがそっと顔を近付けて来る。

え、俺何されるの?


そっと耳に息が当たる。

くすぐったい感覚が身体を襲う。


「旦那様の事は影からいつでも見てますからね? ここにはいつでも飛べるんです」


「ひゃ、ひゃい…」


「はぁ…坊ちゃま…」


キング? これは違うんです。

なんでも無いんです。

そんな目で見ないでもらっていいか?


「とりあえずかなり急ぐ必要もないからね、馬車を幾つか出そうか」


「御意」


やっと気を取り直し、皆で馬車に乗り込み進んでいく事となった。


え? 俺? 一台分の御者やってますけど???


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