第二百九十五話
「あ、あと一つ秘密兵器があるんだった」
まだあるのかよとキングは若干呆れ気味だ。
「はぁ…してどんな物なのでしょう」
ふっふっふ。
良くぞ聞いてくれました。
「これだよ」
「宝玉…?」
「これは、特定の条件で発動する核になる物だね。 解除も出来るから一回起動してみようか」
俺が手を翳し、魔力を僅かに流す。
すると、ゴゴゴゴゴ! と轟音を立てながら周囲の地面がうねり出す。
「これは…?」
「まぁ、見ててよ」
次第に土の中の微小な金属が集まり始める。
ドンドンとパーツに分類され、合体を始める。
ガチャン、ガチャンと合体していくのが面白い。 これはちょっとネタに走ってしまったか。
「ご、ゴーレムですかな?」
「近いね。 このゴーレムは人が乗り込む事で操縦も出来るんだよ。 本体の材質を変えればかなり強度も上がるよ」
「これまた珍妙な…」
「さっきの余った土とかで弾丸…所謂矢の様なモノを作り敵に当てる事も出来る。 背中に背負ってる盾は構えると魔法障壁も展開されて二重の防御が可能になる」
「また良く分からない事を…」
「あくまで根本は自立型で、敵味方を認識して自動行動してくれるんだ。 ちなみに俺達の魔力なんかは認識させてあるから絶対敵として認識されないように組み込んであるよ」
キングさん? そんなに遠くを見てどうしたんですか?
こ、これは流石にやり過ぎたか? ちなみにまだ同じ核が九個ほどあるんですが…。
それを言ったら流石にキングが怒りそうなのでギリギリまで隠しておこう。
「では、そろそろ我々も行きましょうぞ…」
「そうだね、向かわないとだね」
俺達は馬に乗り、先に出た人達へと追いつくために速度を上げ…いや、俺達が直接走った方が早いか…。
だが何かあっても良い様に馬が居て損は無いだろう。
「久々に馬に乗ると気持ちいいな」
「爺は空を飛んだ方が早いのですが、これも粋で良いですな」
さてさて、状況はどう転んでいくものか…。
計画を潰して回っている今、敵は多分四方から確実に攻めて来るだろうけれど。
「ふむ、眷属からの情報によると…各国に敵が現れた様ですが、既に皆移動している為、無駄足になった様ですぞ。 しかし、第二陣まで送ってくるのは随分と手が込んでいますな」
「予想はしやすかったけどね。 奴の目的なんてどうせ碌でも無いさ」
「魔神王を倒した跡地の監視は?」
「滞りなく」
「なら大丈夫だな、全部潰してしまおう」
馬用のポーションのお陰で馬が疲れる気配がいつまで経っても無い。
薬師って凄いな。
「坊ちゃん、馬とはこんなに速かったですかな?」
「いや、そんな事ないよ。 これはちょっと…」
「速すぎますな…?」
こんなの三冠馬もびっくりして泣いちゃうぞ…。