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第二百八十二話

よく冒険者とかが酒場で奢る様な感覚で皆に酒を振舞う陛下。

陛下、俺の財布がこの大会の財源ですからね。 後で請求しますからね。

ちなみに陛下や公爵閣下、宰相閣下と言った重鎮達が美味いと言った事により、我先に貰おうと言う人が続出してしまった。


あんなんでも陛下って人気者なんだね。


そうこうしていると制限時間が来てしまう。


結局陛下は途中からずっと酒を飲んでいた。

しかも気付けば俺のお祝い用に取っておいたはずの酒にまで手を付けてる。

アレク父様…陛下の隣で酒を飲んで何をしていらっしゃるのだろうか…。

ミザリア母様に報告をして…。


あぁ、俺は見てはいけないものを見てしまった。


特別席で酒盛りをしている上位精霊達に紛れて両手にグラスを持ち酒を飲んでいるミザリア母様。

もう誰がこれを止めるんだ。

団長すら目を隠して何も見ない様にしてるじゃないか。

司会の人は…。 だめだこりゃ。


制限時間が近付いて来ていることから、そろそろアナウンスが入るか?


「皆様! 残り三十秒となりました! ただいまのトップはなんと! マキナ様! マキナ様だああああああ!!!」


嘘だろ、おい。


「それに追随する形でSランク冒険者が!!! ここからがデッドヒートだあああああ!!!」


マキナの食べ方はとても気品があり、綺麗と言う印象だ。

しかし、その食べ方でどうやってそんなに食べているのか…きっと七不思議に入る事だろう。


「おおっと!!! ここで競り合いが始まりました! 残りは十秒! 十秒でございます!!!」


会場からカウントダウンの声援が入る。

これ近隣に住宅が無くて良かったよ、ほんとに。


「さぁ! 五! 四! 三! 此処で逆転だああああああ!!! 結果は一枚と言う僅差でSランク冒険者のイーファリアさんだあああああ!!! 二位はマキナ・フォン・マーガレット様だあああああ!!! 皆様盛大な拍手を!!!」


大白熱の最後だったな。

これで陛下があんまりだったのは皆忘れ…。


だめだこれ。


「皆の者~! 祝いじゃあああああ! ほれ酒を持ってこーい!!! 今日はテイルの酒じゃああああ!!!」


狸爺どころか、アレはもう災害だ。 生ける災害そのものだ。

だが、ここで宣伝に成功すれば…。


「ご来場の皆様! 大会をお楽しみ頂けましたでしょうか?」


わああああああっっと歓声が響き渡る。


「おぉ、これは素晴らしい。 本日は初の試みですので、陛下のバックアップがございました。 本日お出しするお酒は全て陛下の買い上げて下さったものです! さぁ、陛下に感謝を込めて飲み干そうではありませんか!」


あ、陛下が真っ青な顔になってる。


「あ、いや、あの…テイルよ…流石に…」


「え? 今回の大会のお酒は陛下持ちですよね? 公爵閣下、宰相閣下?」


「私はそう聞いているな」


「えぇ、私もそう耳にしました。 流石は陛下だと思います」


陛下のがっくりしている姿を見て、王子達がとても嬉しそうな顔になっているのを俺は見逃していない。


いつか彼らにも出資をして頂かねばなるまいと心に誓う瞬間だった。


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