第二十七話 面接の時間
意識が戻ってしばらくしたあと。
医務室の先生に感謝を述べ医務室を去ろうとする。
「マルディン君。 君はここで待っていなさい。 面接はこちらで行う事になるとの事だ。 それに失った血はすぐには戻らないんだからね、もう少し安静にしていなさい」
「...わかりました」
なんだか分からないがとりあえず待つことにする。
それから数分が経ち先程助けてくれた老人が入ってくる。
「改めて、ここの校長のマーリンじゃ。 三賢者の一人でもある」
「はい、先ほども仰っていましたね。 三賢者とはあの勇者物語と言う英雄譚に載っている三賢者ですか?」
「いかにもその三賢者じゃ。 ワシは魔王討伐した勇者パーティの一員じゃ」
魔王討伐の様子は絵本に描かれているくらい有名な話だ。
勇者パーティは三方向に分かれ、魔王の勢力を潰していったって話だったか。
「凄いですね、そのようなお方が僕の面接をしてくださるなんて...光栄です。 お話の中でしか聞いた事が無かったものですから、先ほどは大変失礼を...」
「よいよい、今回は学院の面接じゃからの。 ワシの経歴は関係ないのじゃ。 さて、本題じゃがマルディン君。 いや、テイル君は跡取りではなくなったのじゃな?」
「はい、錬金術師を賜ったのでハズレ職は要らないとはっきり言われてしまいました。 成人の十五になったら家を出されます」
急に怒ったような顔をしたマーリン。 僕はなにか嫌な事でも言ってしまったのだろうか。
「ふむ、その親にはいつか教育が必要な様じゃな。 答えなくてもいいのじゃが、魔法を無詠唱で放っておったそうじゃな? 錬金術師でも無詠唱は可能なのか?」
「いえ、ここだけの話で留めて欲しいのですが...無詠唱で魔法を放ったのではなく、錬金術で魔法を模倣して放ったのです。 ですから詠唱なしで行使が出来たのです」
「なんと!? その様なことが可能だとは聞いたことがないぞ! それが事実だとしたらかなり今の錬金術師の立場が変わってくるぞ!」
マーリンはこれまでにないくらい驚いている。 今までの歴史が否定されたのだから当然だ。
「えぇ、ですがまだその時ではないのです。 なにせ課題が山積みですから...。 実戦経験も乏しく実用性や再現性を証明出来ていないのです」
「そうなのか。 なら致し方あるまい。 いつか来るその時を待つとするかの」
話が分かってくれる人で助かった。 この人は信じても良いのかもしれない。
そして本題に戻る。
「では面接に戻ろうかの。 質問は簡単じゃ。 テイル君、君は魔法をなんと捉える」
難しい質問だ。 魔法は便利だが人を殺める刃にもなりうる。
そこが問題の趣旨なのかもしれない。 素直に答えておくのが吉だろう。
「そうですね。 魔法は時に使い方を誤れば凶器になります。 だからこそ僕達は魔法を正しく知り、正しく使うことが大切になってくると思います。 戦争や、魔物討伐はそれの応用だと思っています」
思っていることをつらつらと述べる。
「ふむ、そうか、わかったぞい。 これは個人的な疑問なんじゃが、何故錬金術を魔法に応用しようと思ったのじゃ?」
「純粋に知識を無駄にしたくなかったのが一番の問題。 また、何より不遇だって言われている錬金術師が強くなったら面白いと思ったからです」
「ふむ、ありがとうの。 結果はもう言ってもいいじゃろ。 現時点では合格じゃ。 筆記も実技もほぼ満点の首席のはずじゃよ」
合格な事には素直に驚いた。 合格発表前に教えても良いものなのだろうか?
「ありがとうございます!」
「それとテイル君には本物の無詠唱魔法も覚えてもらわないとならんかもしれんから、覚悟するんじゃぞ」
「...はい」
深くは聞かないが俺には分からない何かあるのだろう。
それでも三賢者のマーリン様に錬金術師の可能性の一端を見せれただけでも十分か。
それにしても回復魔法はすごい。
骨折していた場所がもう完全に治っているのは驚きだ。
これはどうにかして僕も覚えたいところだ。