第二百六十六話
最近剣術や錬金術の指導をしなくても自主的に基礎的な事を反復で行ったりしているので手が掛からずに済む。
そう言えばエルンス達の仕事が早過ぎてドン引きした。
なんでも、酒の種類を増やすとキングが耳打ちした瞬間から目の色が変わったんだとか…流石に過労死とかはやめてくれよ…。
「ブルルルルルルルルルル」
この良く分からないボア系の魔物って肉が凄い美味しいんだよなぁ。
飼えないかなぁ…。
ボア系は種類が多いのでたまに知らない種類が居る事もある。
高ランクと言ってもコツコツやってきた訳では無いから仕方ない。
鶏の様な魔物や牛の様な魔物は沢山確保してある。
色々試行錯誤をしなければいけなくなったが…。
とりあえず目の前のこのボアを持って帰ろう。
軽く近付き、頭を小突いた。
それだけで気絶してしまうのは何とも言えないが。
さて、この凄く茂っている木々や、作物達に関してツッコミを入れたいが…。
「あれ? テイル君…? 何してるの…?」
マリアとばったり出会ってしまった。
俺がこんな軽装で屋敷を抜け出し、こっそり獲物を取りに来たとかバレたらまずい!
「いや、たまたまボアを見つけてね…。 とりあえず気絶させて捕獲してみた」
「そ、そっか。 それ、レアな種類だった様な気がする…。 その種類のボアの子供がすっごく美味しいんだって…」
良い事を聞いたな。 エルンスに大きめの飼育部屋を作ってもらうか。
お腹が減ってしまう。
早く戻らねば!!!
「あ、テイル君、屋敷中で捜索されてるから多分今帰ると怒られ…」
ヒィ…!
その言葉だけで背筋が…。
よし、まずは速攻エルンスの所だ。
「エルンスの所行ってくるね~」
「あぁ、罪の無いエルンスさんまで一緒に怒られる…」
良い巻き添えが居てくれたものだ。
と言うより、全てをエルンスに擦り付けよう。
「エルンス―! 居るか―!」
「…酒…」
「酒よりまず、こいつの飼育小屋作ってくれよ。 金属なら幾らでもやるから」
「…食うのか?」
「繁殖に成功したらいつかは食べるだろうね」
「どこに作ればいい?」
「屋敷の近くで適当に余ってる土地無かった?」
「あぁ、丁度良いサイズの空き地があるぞ。 丁度森からも近い」
「じゃあそこ買い上げて、そのまま使って。 こいつはウチでしばらく調教しておかなきゃ」
顔が引き攣っているエルンス。
何かおかしな事を言っただろうか…。
まぁ良いけど。 これ担いで帰るか。
「旦那様? ここに居らっしゃったのですねぇ…」
とっても笑顔のキングがそこには居た。
笑顔の裏にとっても怒りが籠っている気がするんですがそれは…。
「さて、帰って皆に説明をしてもらいますからな」
「はい…」
「エルンス殿も…気を付けて下さいね?」
「ヒィッ! はいっ!!!」
そうして俺は今日も強制連行されてゆく。