第二百六十一話
三人を連れて露店を巡っていく。
最近の露店はどうやら品質が高いらしい。
さっきの串焼きも良い肉だったはずだが…。 あれを人数分買っても銀貨まで行かないのはこの領地の冒険者の質が良く、新鮮な状態で肉が沢山手に入るからなのだろう。
そう言えば同じ一角兎でも一角兎と一角兎が居るのはちょっと区別しにくい所だな。
ホーンラビットの方はとても肉が美味いけれどアルミラージはどうなんだろうか。
今度アルに聞いてみても良いかもしれないな。
ちなみに最近アルは敷地内で遊び回っているので敷地内だと神出鬼没である。
そんな事を思いながら様々な露店を見ては何かを買い食いしたり、ウィンドウショッピングを楽しんでいた。
「パパ…」
龍は結構宝石とかそういうのが好きって聞いたことがあったけど、子供でもそうらしい。
この子達が眺めているのはキラキラと輝くペンダントだ。
値段も安い事からこれは魔石…もしくは宝石の欠片だろうか。
「店主さん、これは何の石ですか?」
「りょ、領主様…領主様に買って頂くようなモノでは…。 それらは北部にある雪山付近に良く生息しているホワイトウルフの魔石です…。 魔石の中でも綺麗な部類だと思います。 最近は腕利きの冒険者も多くウルフ系くらいには後れを取る事は少ないので結構手に入るのですよ」
「そうなんですね。 確かに綺麗な魔石は魔石としてはあまり力は無いけれど、これだけ綺麗なら十分装飾品としての価値はあるね。 皆はどれが欲しい?」
おぉ、皆真剣に選んでいる。
ここまで一生懸命選んでいるとプレゼントのし甲斐があるな。
俺はこの良く分からない丸い形にしよう。
なんのモチーフなんだろうか。 ただ丸い。
「俺はこれにするよ。 皆は?」
「パパとお揃いにする!」
「私も!」
「じゃ、じゃあ私も!」
あら可愛い。
この子達一体誰の子かしら! なんと! 俺の子ですって!
「店主さん、これと同じの人数分貰えますか?」
「え、本当に宜しいんですか…? 一応丁度人数分ご用意出来ますが…」
「えぇ、折角の子供とのお揃いですからね、どんな物でも記念です。 それに、子供の内から高価な物を持たせるのは怖いので…。 じゃあそれをお願いします。 そのまま付けて行くので包装は結構ですよ」
「ありがとうございます。 それでしたらお代は結構ですよ。 そのペンダントのモチーフは領主様の持つ聖剣…今は聖刀でしたな。 あれに付いている石なのですよ。 なのでお代を頂く訳にはいきません」
あぁ、謎にこれに惹かれたのはそのせいか。
嬉しい事だがここはちゃんとしないとな。
「駄目ですよ。 ちゃんと代金は支払います。 折角ですからご家族で何か良いモノでも食べて下さいね? この領地はどこに行っても美味しい物が食べられますから」
そう言って余分に支払う。
金貨二枚。 ただの無価値とされている魔石のペンダントにそんな不釣り合いな額を渡されても困るだろう。
庶民が金貨を持つなんて余りないからなぁ。
そして、唖然とする店主を放置して俺達は一旦広場へと向かった。