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第二百五十九話

「どうして俺は執務室に缶詰にされているのだろうか」


ぼやく事しか出来ない。

パパと呼んでくれる子達は妻や他の従者達に引っ張りだこで、キング以外誰も執務をしてくれなくなった。

よもや地獄である。


「ま、まぁ爺が居りますから…」


「そ、そうだね…」


俺より仕事出来るもんね…。

全然キングが居てくれるだけでありがたいが。

ところでキングって呼んでるけど、この調子で色んな種族が仲間に加わってきたらもしかしたらキングの呼び名も変えないといけない時が来るかもしれないな。

キングがいっぱいいたら訳わからなくなりそうだし。


「あ、そうだ、なんで商会のやつもここに混ざってるのか分かんないけど、この新しい酒の販売だけどさ、もう少し待っても良いかもしれない」


「ほう、それは何故でしょうか?」


「んー、例えば種類別にセット売りとかもしていいと思うんだよね。 セットだと少し割り引いて販売すればそっちの方が購買意欲は高まるだろうし…。 だからどれも三種類くらい用意してセット売り出来る様にしてから販売でも良いかなって。 それまではマーガレット領内での販売にしておけばちょっと価値も上がりそうだよね」


ほう…。 と感心した様に眺めるキング。


「へぇ、面白そうだね。 じゃあ僕達の方で元のレシピを参考に幾つか試作を用意してテイル君に試飲してもらえば良いかな?」


「お前、いつの間に…」


「ははは、いつだっていいさ。 精霊やエルフ、ドワーフに錬金術師に魔法師…沢山人材が集まったせいで凄く高品質なお酒が造れそうだよ」


「んー、じゃあこの間渡したレシピで幾つか頼むよ。 それとこれも幾つか種類作っておいて。 原材料が変われば同じ製法でも当然味は変わるだろうから」


「もちろん。 あぁ、丁度手が空いてるから少し手伝っていくよ」


あぁ、うちの妻達にも見習って欲しい所だ…。

…急に寒気がしてきた。

俺は何も言ってません。


「テイル君、どうしてこんなにこの領地は不正が無いんだい…」


「流石にここで不正したら陛下が黙ってないのが分かってるんじゃない? それに、そこまで法外な税収でも無いからどこも不正をする必要が無いんだよ」


「ほっほ、それ以前に色々あり過ぎて忘れていらっしゃるがしばらく減税されておりますからな」


「金銭じゃなく、別の形で支援してるってのも大きいのかな? これを見越してやってるんだったらテイル君は天才だね」


いえ、まったくの成り行きです。

通行が不便だったのが嫌なのと、水路が無くてわざわざ魔法を使ったのが面倒だったから支援してるなんて口が裂けても言えない。

口に出さなきゃ良い人で終われそうだ。


「あはは、そうだといいな」


「現に傷病率も減っているし、犯罪率も減っているんだろう? これは凄いと思うよ」


「どれだけ支援したって皆が努力して、前に踏み出さなきゃここまでにはならなかったさ」


如何にもそれっぽいことを言っておく。

これで俺の評価が下がらなければ商会の売り上げが上がるので最高だ。


「おやぁ、英雄君は相当女好きの様だね」


初代賢者ニア…この人いつの間に…。


「なに、手伝いに来ただけさ。 取って食おうってワケじゃない。 だけど…私は口が軽いから君が鼻の下を伸ばしていたことをつい告げ口してしまいそうだよ。 ところで…手伝っても良いかな?」


すっごい脅迫の仕方じゃない!?


「むしろ、こちらからお願いしたいくらいです。 あ、でも、領主としての仕事なので口外しないで頂けますと…」


「ははは、私はそんなに口は軽くないさ! さぁ、始めようでは無いか!」


まぁ、この人達のお陰で遅れ気味だった仕事が早く片付いたのは言うまでもない。


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