第二十四話 実技試験
「試験終了。 全員筆を置いて用紙を前に回しなさい」
その合図と共に一斉に筆を置く。
そして言われた通り用紙を前に回していく。
終わった者は次が実技の試験なので魔力を循環させたり、詠唱文の確認をしている。
僕はもう初級、下級と少しの中級程度の魔法なら結構覚えてしまっているので問題はない。
そうこうしていると実技用の的のある魔法館と呼ばれる場所に連れていかれる。
「思っていたより広いんだね」
と誰かが言った。
それに対し教師が興奮した様子で
「あぁそうだとも...! 外は小さいが中は広い! これは亜空間魔法を用いた魔道具を使用しているのだよ。 この空間を丸ごと拡張しているんだ。 別空間だとか、地下だとかそんなことはないから安心してくれたまえ」
一体全体何を安心するんだろうか。
嬉々として喋っていたので誰も茶々を入れない。
多分教師達もかなり個性的だ。
試験なのでしっかりしているつもりなのだろうが所々ボロが出ている。
僕たちは目印がされた場所につき一斉に足を止める。
「ここが魔法を行使する場所。 あっちにある的を狙って撃つんだ。 魔法は、初級、下級、中級を放ってもらって構わない。 だが上級、戦略級は君たちにはまだ使えないとは思うが当然ダメだ」
とのことだ。
ただ目印に立って、的を撃つ。 簡単な事だ。
僕の番が来るのをぼーっと皆の試験を眺めながら待つことにした。
一番最初はマリアが行うようだ。
「炎よ、爆ぜろ」
丁寧にファイアボールを詠唱していた。 すごく繊細な魔力循環で魔法を行使しているので、まるでお手本を見ているかのようなのが印象的だ。
かなりの威力が出ていたように見えたが的には傷一つ付かない。
続いて青髪の男だ。
先程も魔法を見たので分かるが一応見ておく。
「風の刃よ、切り裂け!」
詠唱に力を入れ過ぎているのか魔力操作がおざなりで、発動された魔法もそこまで鋭さがない。
「くっ、的は傷一つ付かないか」
当たり前である。 皮鎧すら切り裂けないであろうウィンドカッターでは到底あの的の破壊は不可能だ。
しばらくしてエメリーの番が来た。
緊張しているのか右手と右足が同時に出てしまい皆が笑っていた。
そして行使したのはファイアボール。
詠唱はぎこちなかったものの魔力操作が上手く綺麗に発動していた。
ファイアボールをぶん投げる姿はまるでスポーツ選手の様だった。
それを見て青髪のルクインダルクを名乗る少年は嘲笑っていた。
そして最後に僕の番が来る。
「テイル・フォン・マルディン君、前へ!」
僕は目印に立つと青髪の男がこちらを見て笑っていたのでちょっと悪だくみをしてみる。
「風の刃よ、切り裂け」
わざとあの男と同じ魔法を行使したのだ。 僕は魔力操作のレベルが高いので彼よりも鋭く、綺麗な発動をして見せた。
あえて魔力を多めに行使したので威力もかなりある。
さぁ、的はどうなるかな?
「なんて綺麗な発動だ!」
と一人の教師が関心する。
そして的には小さな傷が入っていた。
「アダマンタイト、オリハルコンの合金だぞ!? そんな簡単に傷がついてしまうなんて!?」
と教師達は驚いている。
そして青髪の男は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見ていた。